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水疱症や、18年で50回以上顔面手術をした女性、身の回りのことをすべて覚えている人など数々の先天性の疾患と闘う子供たちを紹介してきた。
今回紹介させて頂くのは、妻と同じ難病を抱え産まれてきた我が子を臓器移植で救う夫の話だ。
7万人に1人の難病になった妻と息子
©UPMC
NY在住のジョージーとショーンは、一見普通の子だくさんの幸せそうな家族に見える。ただ一つ違うのは、ジョージーが7万人に1という難病を持って生まれてきた事だった。
ジョージーは、アラジール症候群という肝臓に異変が出る先天性の病がある。ジョージーの一番下の息子で、おととしの10月に生まれたソイヤーもアラジール症候群だ。
ジョージーは、産婦人科に行った時、双子の赤ちゃんがお腹の中に宿っている事を知らされた。2人とも男の子だと知らされ、ソイヤーとサイラスと名前をつけた。
だが妊娠6カ月の次の検診で、担当医師はジョージーに、ソイヤーが、サイラス程育っていない事を警告。無事生まれてくるかどうか不安を隠せなかった。
そして迎えた’18年10月の臨月、サイラスは無事生まれてきたが、ソイヤーは全身黄土色の黄疸で生まれてきた。この写真はショーンがサイラスとソイヤーを抱きかかえているもの。ショーンを挟んで、左がサイラスで右がソイヤーだ。
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『一目見て判ったんだ。この子は妻と同じ病を背負って生まれてきたんだったって。』ショーンはデイリー・メール誌に語った。
検査の結果、ソイヤーの肝臓は健康な新生児の半分しかなかった上、全く機能していない重度のアラジール症候群と判明。
このままでは胆道閉鎖症、肺動脈狭窄、腎臓病、発育不全、消化器官の異常が障碍として残ると言われ、1年以内に移植しなければ命の保障はないと医師に余命宣告されてしまった。
そこでショーンが決断したのは、自分の肝臓を生まれたばかりのソイヤーに移植する事だった。しかしショーンは長年の不摂生が祟り、BMIがオーバーしていただけでなく、内臓の状態も良くない。そこでショーンはどうしたか?
移植の為にダイエットした父親
©UPMC/Sean Kelley
ショーンは難病の我が子に肝臓移植出来る体になるために、わずか3カ月で45kg体重を落としたのだ。
その方法は、いたってオーソドックス。ヘルシーな食事を心がけ、早寝早起きをし、仕事がてら毎日3~5km歩き、ストレッチを心掛けただけだった。
そうする事で、内臓脂肪が取れ、悪習慣がなくなり、この写真の通り、背中とお腹の贅肉が取れたのである。痩せたければジム通いはやめて歩く事だ。
1年後の、’19年10月、ピッツバーグ大学医療センター(UPMC)で移植手術が行われたが、担当のジョージ・マゾリエゴ医師は、8時間に及ぶ手術が成功した後、ショーンの頑張りをこう評価した。
©UPMC/Sean Kelley
『彼は長年の生活態度や食生活の悪化で、内臓は移植に耐えられるものではなかった。最初に申し出てくれた時は、まずは君の健康状態をきちんとしてからっと言ったんだ。彼は移植の為だけでなく、家族の為に働いて生きていかなくてはという使命感の為もあり減量してくれたんだよ。』
ショーンは、無事手術を乗り切り今は家でリハビリに励んでいる。『息子や娘たちの命の危機は今まで家族で力を合わせ乗り切ってきた。今度も僕たち家族の絆があれば乗り切れると思ったんだ。』そう彼が言い切る理由はどこにあるのだろうか。
子供の大病の度に家族で乗り切ってきた
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実はショーンとジョージーの子供が大病をしたのは、これが初めてではない。
2人の間にはソイヤーを含め、2人の娘、4人の息子が居るが、長男のトリスタンは心臓病で幼い頃に開胸手術をしているし、次女のメラーナは皮膚アレルギー持ちだ。子供が大病をする度に、家族に課せられた試練と思い、乗り切ってきたという。
アラジール症候群の原因は、20番染色体に存在するJAG1の突然変異もしくは、1番染色体に存在するNOTCH2という染色体の変異とされている。
日本には、200~300人患者がいると言われ、軽度の人もいれば、新生児肝炎を起こして生まれる赤ちゃんも居る。
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欧米ではアラジール症候群の患者の3分の1はソイヤーの様に、早いうちから移植手術を受けているという。
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『僕たちにしてあげられる事は、これぐらいしかない。それでソイヤーが少しでも長生きできるとすれば、それ以上の事はないんんだ。』ショーンさんは、ソイヤー君の笑顔を見て微笑んだ。