カプセルホテルと呼ばないでください
カプセルホテルと一線を画した簡易宿泊ホテルとして急成長した『ファーストキャビン』が新型コロナウィルスの被害を被り破産申請した。
ホテル開業ラッシュや民泊続出によりカプセルホテルの衰退が叫ばれる中、都心に展開し女性にターゲットを絞った簡易型ビジネスホテルとして展開したファーストキャビンが破産したとなると、ホテル建設ラッシュに陰りが見えているのは確かだ。
カプセルホテルとビジネスホテルの中間点だった
ファーストキャビン社は2006年7月設立。
’09年4月に大阪・御堂筋難波店を開き、’12年4月に東京進出。以後も順調に店舗を広げ、’17年には関西国際空港に店舗を開いた。
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宿泊施設のタイプは4種類。
昔ながらのカプセルホテルを彷彿とさせるプレミアムエコノミーキャビン。プレミアムエコノミーがもう少し広くなったビジネスクラス、ベットの横にサイドテーブルがつくファーストクラス。
そして、一部施設に導入されている完全個室で洗面台やお手洗い、ミニバーもついたプレミアムだ。
ホテル激戦区の東京10店舗、大阪4店舗、京都5店舗にオープンし、競合他社となる東急インや、アパホテルが出店しない所を狙って出店した事が成功の秘訣だ。
例えば京都出店の際には、全ての店のコンセプトを変えて出店。烏丸は女性専門ホテルとしてリニューアル。繁華街から少し離れた京都梅小路は旅館風ホテルとして建て、嵐山は商業施設内、二条城、河原町三条も、交差点から外しながら市バスから見える所に出店した。
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ビジネスホテルの宿泊料金が1万円台になる中で、ファーストクラスの様なコンパクトホテルは、新幹線やLLCで出張するサラリーマン、高速バスで旅行する学生に受け入れられる様になった。昔ながらのカプセルホテルでwifiも使えないよりはずっといい。施設は綺麗で共有スペースであるロビーも清掃が行き届いているとなれば、また利用したくなる。
もちろん他の競合他社のホテルと同じく『お昼寝客』にも対応していた。
ビジネスクラスとファーストクラスで2時間単位でショートステイを設けていて、2時間2000円でお昼寝が出来るサービスは、好評だった様だ。
ではなぜファーストクラスをはじめとするカプセルホテルや、ホテル業界がコロナを除いてでも苦境に追い込まれる事になっているのか。
5年の間に増えすぎたカプセルホテル
実はカプセルホテルや簡易ホテル、ここ5年で増えすぎているのだ。
その背景にあるのは『どの業界からでも参入しやすく1年で開業できる』というメリットがある。旅館業法では、ホテル営業ではなく簡易宿所営業にあたるので合宿所や民泊ぐらい法律上ハードル参入が低いのだ。
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1979年に大阪梅田にカプセルホテルが誕生してから早40年。昭和の時代は終電に乗り遅れたサラリーマン御用達であり、昭和から平成にかけてはライブに行く人の為の止まる場所でもあった。
そんなカプセルホテル、’20年現在カプセルホテルは全国で約300軒(客室数ベースで3万2000超)といわれる。
内東京都が全体の3分の1を占める。カプセルホテル、民泊を合わせた簡易宿泊施設の伸び率は’15~’20年までで30%近くになるのだから、どこのホテル業界も宿泊料金割引を競うだろう。
昔ながらのカプセルホテルが一泊3000円弱となっている所もあるのに、ファーストキャビンの様な進化型コンパクトホテルは、一泊の料金はビジネスホテル並となっている。
ファーストキャビンに流れる客の多くは、旧態依然のカプセルホテルの客に馴染めない人が多い。隣のキャビンで寝てる人のイビキが聞こえて眠れない、タバコ臭いのは嫌、個室がいいという人や、ミニマムな宿泊施設がいいという訪日観光客のニーズを巧く取り込んで成功した。
その一方で国内の安定した顧客をつかめたかという点を考えると疑問点も残った。
旧態依然のカプセルホテルを利用していたはずの顧客層は、古いカプセルホテルではwifiを完備していない、シャワーが使えないと言う理由でフランチャイズの24時間営業のマンガ喫茶や、ネットカフェに流れた。これらは原則宿泊業ではないが、人々が流れているのは周知の事実だ。
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お昼寝プランは、どこのビジネスホテルや、カプセルホテルも参入する様になり、ビジネスホテルが『三密』を避ける次の一手も生み出していた。
例えば東急インでは、観光客激減に供え『ビジネス、学生自習客』を取り込む7時間4000円未満の日帰りプランを予約数限定で打ち立てたり、一週間以上宿泊客は5000円未満にするなど、支配人の采配次第でオリジナルの宿泊プランを打ち出している。
こうした取り組みは個室に鍵をかけられず、三密を約束出来ないカプセルホテルや、コンパクトホテルにとって経営上の打撃となった。
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今回の騒動で、ファーストキャビン直営店である築地、京橋、京都河原町三条、京都嵐山、柏の葉は営業終了の運びとなった。
他のフランチャイズ店舗は、オーナーが営業を再開するか判断を下した結果、緊急事態宣言後、決定が下されるというが、コンパクトホテル不況の今、難しい局面に立たされているのではないだろうか。