米ミシシッピ州に住むハンナ・デュナウェイさん(’19年現在18歳)は、この顔を手に入れるまで、55回手術した。
©MDWfeatures/Hannah Dunaway
生まれる前から彼女を苦しめたのはリンパ管腫(Lymphatic Malfomation)。生まれた時のハンナさんは写真の様に、顔よりも大きな腫瘍が顔面を覆っていて自力で呼吸も出来なければ、水も飲むことも出来なかった。
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ハンナさんは、生後6日目で頭蓋骨を圧迫するバルーン大の腫瘍を取り除き、生後3週目で気道切開の外科手術を受けた。
各内臓器官を膨張した嚢胞が圧迫する為、12の時まで自力で食べる事も出来なかった。4000人に1人が発症すると言われ、ここまで重篤化するのは、数万人に1人と言われるリンパ管腫。ハンナさんは、55回に及ぶ手術をどうやってのりきったのか。
顔面腫瘍で生後6日で手術
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『ママはお腹の中に私が居た時から、私の病気が判っていたの。』ハンナさんはDailymailのインタビューに対し、こう答えた。
ハンナさんの母親は、18週目の超音波検査の時にお腹の中のハンナさんに異常が起きているのが判ったという。
ハンナさんの母は最初はダウン症だと思い、ダウン症の専門医を探したが、お腹の中のハンナさんが大きくなるにつれ、ダウン症ではなく、リンパ管腫ではある事が判明したという。運よく生まれてきたとしても長くは生きられないと、その時に言われれていたというのだ。
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リンパ管腫は、頭頚部にできる事が多く、症状の7割以上が頭頚部に見られる。リンパ液が入った大小様々な袋(嚢胞)が集まり症状を形成していて、嚢胞のサイッズは大きいものだと数cmになり、小さいものになると顕微鏡でみなければ判らないほど小さくなる。
症状は3タイプに判別され、嚢胞のサイズが1cm以上のものが多い海面型(マクロシスティック)、1cm未満のミクロシスティック、もしくはこの混合型で、タイプ別に治療法、予後の経過観察法が異なると言われている。
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ハンナさんがリンパ管腫を患った頃は、米国でもこの症状を持つ患者が珍しく、ハンナさんは専門医を求め、NY、アラバマ、アーカンソーと、名医を訪ね歩いた。18になり、ようやく人並みの生活ができるようになったというハンナさんだが、今まで一番苦しかった事は何だったのだろうか。
周りに何も伝わらなかった
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『一番哀しかった事?周りの大人に自分の病状が何一つ伝わらない事よ。手術を繰り返していた思春期の間、9割5分は言いたいことは伝わっていなかったんじゃないかしら。』ハンナさんは手術に明け暮れ、病因に閉じ込められていた日々を振り返る。
リンパ管腫瘍は性質上、転移はしないが、嚢胞内の出血や感染の危険が日常のトラブルとしてあるため、8~9時間に及ぶ手術の後は抗生剤やステロイド剤を投与され、安静にしていなければいけなかったのだ。同年代の周りの女の子はオシャレを楽しみ、旅行や食べ歩きに明け暮れる中、自分はずっと病院の白い天井を見るだけの日々。ハンナは次第に心を病んでいった。
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『今にして思えば、すごく生意気で身の程知らずだったかもしれない。周りに自分の病気を判ってもらおうと毎日必死だったわ。判ってもらえなかった時は、家族や友達に当たり散らしてたもの。』ハンナさんは、手術に明け暮れた日々を振り返る。
そんなハンナさんが、自分に自信がついたのはごく最近の話だ。『嫌な事を言われても、大げさに励まされても、どっちでも鵜呑みにしないようにしたのよ。以前の私は、励ましてくれる人や甘い言葉をかけてくれる人にばかり、寄りかかっていた。そうじゃなくて、頭を冷やして考えてみれば、人生が楽になったのよ。』
彼女はさらに自分自身の人生を楽にする為に、かつてお世話になった人たちに、少しでも親切にしようと心掛けているという。『ほんの少しの親切と、自分がされて嫌なことはやらないようにしているだけなのよ。』
そんなハンナの次の目標は何なのか。
56回目の手術に向けて準備中
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ハンナは現在、56回目の手術にむけて準備中だ。最後の関門であるアゴの手術だという。
リンパ管腫は、根絶というよりも、現在ある嚢胞が悪さをしないように抑える治療方針を取る。場所によっては経過を見る所もある。アゴも長い間経過をみていた箇所だったのだが、今回手術に踏み切ることになったらしい。
『私の顔と体だけで既に500針も縫っているのよ。皮膚はお腹から取っているの。こういうのは誰も想像できないわよね。』
ハンナは、生まれた時のように1人ではない。家族も彼女の病状は理解しているし、ボーイフレンドのマシューも傍にいる。『今でも私自身周りの人を驚かせないかと思うと怖くなることはあるわ。でも昔と一つだけ違うことがあるの。今の私には家族の理解とマシューが傍らにいてくれることね。』