オシャレなカフェ、ディナーで『インスタ映え』を狙い、スマホで写真を撮るのが当たり前になった。
インスタも宣伝のうちと割り切るお店が多い中、勇気をもって『まった』をかけた人気レストランが英国にある。しかも、そのお店、スマホ写真撮影を禁止にした途端、リピーターで大繁盛してるというのだ。
©Facebook/Casa Italia
このレストランが始めた試み、どの様なものだろうか。
お食事前にスマホをウェイターに預けると料金割引に
©Facebook/Casa Italia
大胆な試みを行ったのは、英リパプールにある、イタリアンレストラン『Casa Italia』。
’19年6月に、英レストランアワードのリバプール部門で1位を獲得した、いわば『地元一番』のお店だ。
地元一番を獲得したオーナーが始めた試みが『Let’s Talk』というシステム。
お客が席につき、ウェイターがメニューを差し出す前に、ウェイターが声掛けをする。『スマホにロックをかけ、お預け頂ければ、料金から5%割引させて頂きます。』無論、強制ではない。
支障がなければ預ければよいし、不満であれば預けなければよい。急用の電話がある場合は店の電話からかけても、きちんと5%割引うぃ受けられるというシステムだ。
『Let’s Talk』割引システムを利用した客は、メニュー注文前に、スマホをウェイターに預け、お会計時に、スマホを受け取る仕組みになっている。
この割引システム、’19年11月から始まったもので、俗に言われるPhone Amnesty(スマホ自主規制)と呼ばれるものだ。どんな客層にウケたのか。
意外にもウケたのは常連客
©Facebook/Casa Italia
この試み、意外にもウケたのが常連客だった。店が有名になる前から通い、支えてくれた常連客が、このシステムを知った途端、リピート率が多くなった。
『素晴らしいアイデアだ』『食事が目当てで店に行くんだから、スマホはみないよ』というモノから『最近の客ときたら、皿が運ばれてきた途端、スマホで写真ばかり取りやがる。ちょっと店が有名になった途端これだ。』というものもあれば『こりゃ、思い付かなかった。どいつもこいつも、食事に来てるのに、スマホがないと生きていけないのか、ってヤツばかりだしな』と、常連のうっぷんがふきだした。
このアイデアを思い付いたのは、まだ30代の若い支配人。独自の料金割引システムを導入しようと思ったのは、お店の客の8割方は常連だったからだ。
『幸いにも僕の店は常連に恵まれていたから、このシステムを導入することがたやすかった。SNSの宣伝に頼るお店だったら、出来なかったと思うんだよ。地元のリピート客も増えたし、食事中に会話を楽しんでくれるようになった。確かにまだいるよ。スマホがないと落ち着かないという人はね。』そんな支配人が、この取り組みを思い付いたきっかけは何だったのか。
大事な人とすごす時間はお金に代えられない
©Facebook/Casa Italia
『Casa Italia』の支配人で、ディレクターのアラン=カンポルチーニ=ボーディは、家族連れのお客様が、スマホで料理を撮影した後、食事中に会話をたしなまず、黙々と食べ、バラバラにスマホをいじっている姿を見て、違和感を感じていたという。
『食事は最愛の人と過ごす大切な時間の1つだと思っている。家族、友人、恋人、そんな大事な時間に違う人とスマホでつながって、目の前にいる人をないがしろにするという事は、食事そのものを提供する私たちも切なくなるんだ。』
大事な人と食事をする時間は、お金に代えられない。アランは言う。
レストランのミシュランの星の数より大事なものがあるとすれば、気に入ったレストランで過ごす、時間という名の質を上げる事ではないだろうか。その結果、導き出したのが、スマホを食事中に店側に預けて貰うという割引制度だった。
私たちは、巷に溢れる、おでかけ情報を頼りに、評判のよい有名店があれば行き、写真を撮り、口コミメディアにアップする。その情報を頼りに、店に行く人が増え、そういう人たちと繋がりたいという思いがあるからだろう。
が、今回出てきたアランは、それよりも地元の人に店が支えられている事や、大事な人と過ごす時間の大切さを取り、あえてスマホの使用を自粛して貰うよう、呼びかけた。その結果、成功した。
アランは自分の店のあるリバプールだけでなく、英国中に『Phone Amnesty(スマホの自主規制)』のムーヴメントが起きればいいと思っているという。
『考えてみてごらんよ。僕が見習いだったころは、スマホってものはなかったし、お客さんは用があれば、店の固定電話から電話をかけていたんだから。』