NYを拠点に、米国、欧州に7店舗展開するセレブ御用達イタリアンレストラン『CIPRIANI(チプリアーニ)』のカフェ部門『CIPRIANI DOLCE』のオーナーシェフ・アンドレア・ザンペロニ(Andrea Zamperoni)が、’19年8月22日、遺体で発見された。享年33歳だった。
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死亡する4日前から行方不明だった
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アンドレアが居なくなったと一番最初に気付いたのは、彼のルームメイトだった。アンドレアは事件現場から1ブロック離れたマンハッタン東部のウッドサイドのアパートで同僚とルームシェアをしていた。
ウッドサイドは日本人も住んでいて、JKF空港まで車で30分。治安もほどほどだ。ルームメイトは土曜の夜勤の晩を最後にアンドレアを見ていなかったが、月曜の昼から同じシフトだったので気にしていなかったという。月曜の昼にアンドレアが出勤してこなかったので、捜索願をNYPDに出すことになった。
ソース担当シェフのマニュエル・イグナシオ・アルボは、アンドレアと同じ時期に労働ビザで渡米し、働き始めて以来の友人であり同僚だ。Dailymail誌のインタビューに、彼の謎の死に対しこう答えている。『アンドレアが殺されるなんてありえない。彼ほど信頼を得ている人間はいない。それに彼は誰よりも家族を愛していた。』
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アンドレアは、イタリアに居る母親にテレビ電話で決まった時間に連絡していたのを職場の同僚が覚えていた。マニュエル曰く、アンドレアは5分でも遅刻すると判っていたら事前に連絡を入れていたという。それが遺体が見つかった週の月曜日、アンドレアの母親から職場に電話があったのだ。『息子から連絡がこないの、誰かどこに行ったのか知らない。』これは一大事だと。
アンドレアの近所の人間も、アンドレアが月曜の昼にアパートから出てくるのを目撃している。という事は、月曜まで彼は生きていたのだ。殺されたのは火曜から水曜になる。では、いつ、だれが何の目的で彼を殺したのか。
パスポートも財布も置いたままだった
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アンドレアの遺体が見つかったのは、彼のアパートから1ブロック先。クイーンズ州エルムスハートにあるホステル、カムウェイ・ロッジのダブルベッドルームだ。遺体は毛布にくるまって見つかったが、パスポート、IDカード、財布もそのままだった。
チプリアーニの支配人のフェルナンド・ダローソは、今回の事件は顔見知りによる犯行ではないかと疑っている。『アンドレアはこの業界の人間にしては珍しく慎ましく、派手なことは嫌いで出歩かない。パーティーも嫌いで、休みの日は、自然に触れる方が好きなタイプだ。金目のものが盗まれていないというのが気になるんだ。』
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そんな中、アンドレアの死亡推定時刻にカムウェイ・ロッジにチェックインした一人の客が、第一容疑者として浮上してきた。
CBSによると、容疑者の名は、スコットランドからの旅行客、エブリ・ミューレンで、朝起きた時に、NY市警の警官がやってきて、毛布にす巻きにされたアンドレアを運ぶのを見て、その後に、自分が第一容疑者と特定され、連行されたのだという。
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『全く身に覚えのない話だわ。隣の部屋で殺人事件が起きたというだけで殺人犯に間違われて、尋問を受けるのよ。シェフ?全然知らない人よ。』どうやら彼女は巻き込まれただけで、全く関係のない人であることは、誰の目で見ても明らかだ。
誰からも尊敬され、ファミリーマンだった人間が何故?
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現場でアンドレアを知る人間は、支配人のフェルナンドを含め、同僚たちも『尊敬すべき人間で、ファミリーマンだった』と口をそろえて言う。
『この職業の人間は神経質でピリピリしているか、どこか気取った人間、天狗になってしまう者が多い。アンドレアには、そうした所が全くない稀有な存在だった。僕は一緒に仕事をしていて癒された。何度救われたか判らない。』フェルナンドはそう語る。
アンドレアは『CIPRIANI』で10年以上、ウォール街本店をはじめとし働きつづけてきた。『CIPRIANI』で働く前は、ロンドンでシェフをする弟と共にレストランをしていた。そんな彼にカフェ部門『DOLCE』の白羽の矢が当たったのが2年前。彼はグランドセントラル駅構内に出来た『DOLCE』を見事に軌道に乗せた。
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フェルナンドは、各メディアのインタビューに対し、アンドレアへの哀悼の意を、こう表した。
『アンドレアは責任感があり、よく働き誠実な男でした。私だけでなく同僚の期待に常に答え続けるシェフでした。カフェ部門を立ち上げ、これからという時に謎の死を遂げたことが私だけでなく彼を慕う者たち全てにとって深い哀しみです。NYPDには彼の謎の死を無駄にしないよう、全力で捜査にあたってほしいと思います。』