’19年9月、米アパレル、バナナ・リパブリックと、親会社のGAPが、元従業員にパワハラ、年齢差別で起訴されるという事件が起きた。
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起訴を起こした元従業員は、御年85歳。個人経営ブティックの店長ではなく、昨年解雇されるまで従業員だった。年齢や地位名誉の格差を切り開いてきた元従業員が起こした訴訟とは、どの様なものだったのか。
72歳で、バナリパ入社しトップセールスとなった叩き上げ
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訴訟を起こしたのは、同社の元従業員で、ケンタッキー州在住のニーナ・ザロコスタスさん(Nina Zarocostasu:85歳)。同州レキシントンの巨大ショッピングモール・Fayette Mallの店舗で、13年間勤務していた。
ニーナさんは、バナナ・リパブリックで働き始めたのは、72の時。同業他社で働いていた経験をいかし、ニーナさんは、売上を伸ばした
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。日本の同社のファッションアドバイザーと違い、この通り、ヒョウ柄のワンピースにハイヒール。トミー・フィルガーやラルフ・ローレンを購入する客に、ぴったりのコーディネートを薦め、買わせるのが巧かったという。
米本社にはノルマがあり、達成したセールスレディは『Banana Republic Platinum Circle』と呼ばれる、売上達成と集客の為のセミナーを受講しなければいけなかったという。
ニーナさんは、その中でもさらにトップとなり『ステラ・サービス』と呼ばれる、売上トップのファッションアドバイザーのみ利用できる社内サービスや福祉を利用していた。
が、勤続8年目で、ニーナさんの両足は、関節炎に襲われてしまう。長年ハイヒールで立ち仕事をしていた為だった。これが天職と思い続けてきただけに、ニーナさんの人生初めての挫折だった。
関節炎が悪化し、立っている事ができなくなったニーナさんは有給をとり手術を受け、リハビリの結果、歩ける様になったが、医師からは長時間の立ち仕事を禁止された。
ニーナさんは、会社に病状を報告すると、会社側は、彼女をジェネラル・マネージャーとして昇格させる事で、接客時以外は立たなくてもいい様に配慮した。
だが、’18年5月の人事異動で、ニーナさんは突如、元のセールスレディに戻されてしまった。何故なのか。
孫ほど歳の違う美人上司からの、いじめ
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’18年5月、バナリパは、ニーナさんの代わりに、29歳のアンドレア・モベリーを、ジェネラル・マネージャーとして、親会社のGAPから送り込んだ。折しも、GAPは、’16年にオールドネイビーを閉店。バナリパの店舗縮小、リストラに入っていた。
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この通り、一見誰にでも優しく、人あたりがよさそうに見える女性だが、ニーナさん曰く『外面が良くて、権力者に媚びて、私にだけは態度が違う。とんでもない女の子だったわ。』と嘆く。
ニーナさんの起訴状によると、アンドレアは、10分の休憩を取る事も許してくれなかったというのだ。ニーナさんが昔からの気心しれた従業員と喋ろうとすると意図的に遮り、シフトも入れ替えた。
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『一番酷かったのは、そんなに足が痛いなら、(接客はやめて)お手洗いにいけば?』って、常連客の前で、言われた事よ、そんな事ってある?13年もトップセールスの座を守っていたのに、ある日突然来た孫ほど年齢の離れた子が、何を言うのって思ったわ。』ニーナさんは憤りを隠せない。
アンドレアが、意図的にシフトを外したため、ニーナさんは週3日しか働けなくなり、同社の規定である週6日勤務を満たさないとして、ニーナさんは今年、リストラの対象になってしまったのだ。
『私の事を知っているお客さんは、皆あのお店に来て下さったわ。足はどう、と聞いて下さった。なのに、あの小娘は、本社から何も知らずにやってきて、私から売上を奪ったのよ。私を雇った会社も、あの小娘も法の下で罪を明らかにしたいわ。』
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一方アンドレアはというと、『私は、彼女が関節炎だなんて知らなかったし、よく休む人だと思ってた』の一点張りで、Dailymailの独占取材に対し、それ以上答えなかった。
日本では、80を超えた女性が、ショッピングモールや百貨店のテナントに入ったり、路面店として進出するアパレルブランドに、ファッションアドバイザーとして雇われるというのは信じがたい。しかも雇用の不平等を巡って訴訟を起こす機会を与えられるというのは考えられないだろう。
だが、海を渡った米国では、70を超えて入社し、会社に貢献しつづけた彼女だからこそ、訴訟する権利が得られたと言えるのではないだろうか。
ニーナさんの起訴状の内容が正しければ、アンドレアや親会社GAPが行ったパワハラは責められるべきである。事実彼女は関節炎になった後も、顧客をつかみ、売上に貢献していたというのだから、年齢で判断するのは間違いだろう。