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グロック17という拳銃をご存じだろうか。
オーストリアの銃器メーカー・グロック社が’83年から作っている9mmパラベラム弾の自動拳銃だが、創業者のガストン・グロックの誕生パーティーに銃乱射事件に反論しているセレブたちが参列している事や、グロック本人の遺産相続問題が揉めていた事が、明らかとなっている。
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ガストン・グロックの誕生日イベントに出るセレブの思惑は、そして銃で大金を儲けた男が失ったものとは。
創業者90歳の顔ぶれが並じゃない
ガストン・グロックの誕生日祝いは、オーストリアのヴェルダー湖畔にある五つ星、フォルケン・シュタイナー・シュロスホテルでグロック社がオーナーだ。
パーティーの参列者は100人あまりで、そのうちの半分は各業界のセレブリティ。プライベートジェットで着て、パーティーが終わったその日のうちに帰って行った。
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パーティーを仕切るのは、ガストンの二番目の妻で、現在は経営権を握るキャサリン・グロック(38)だ。’08年にガストンが心筋梗塞で倒れた時に、助けた看護婦がキャサリンで、それ以来の付き合い。
ガストンは糟糠の妻ヘルガと、裁判でもめにもめた末、別れ、キャサリンと結婚。50歳の歳の差婚は、8年前業界を騒然とさせた。
他にも『Sex and the City』のクリス・ノーズ、クリスティン・デイヴィス、ジョン・トラヴォルタが参列。トラヴォルタは、キャサリンの弟で、同じくグロック社の経営に携わるデヴィット・ツチコフと写っていた。
デヴィットと、写真に写りこんでいる面々は他に、英国のオーディション番組『Xファクター』で知られるレオナ・ルイス(34)。
彼女はこのパーティーの一週間前にコレオグラファーのDennis Jauchと結婚し、ゴージャスな結婚式を挙げ、新婚旅行先から駆け付けたというのだから、グロック社はセレブにどれだけ大きい影響を与えているのかという事になる。
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ガストン・グロックの誕生日イベントには、セレブがパフォーマンスをする事で知られている。過去にはマライア・キャリー、カイリー・ミノーグが立ったこの舞台、今回はロビー・ウィリアムズが立つ事になった。
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今回のイベント、様々な人々が集まり、その中にはスーパーモデルのナオミ・キャンベルも姿を見せていた。だが彼女はこう言う。
『銃のあり方については反対よ。私たちがこのパーティーに出るのは、グロック社がホースマンスクールを作っているからなのよ。』どういう事なのだろうか。
表向きは、競馬のチャリティ?
ガストン・グロックとキャサリンは、’12年から、競走馬や騎手を養成する
『Glock Horse Peformance Center』を設立。
この誕生パーティーもダービーに出場する馬や騎手への寄付金集めの一環として開かれているというのだ。
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『銃は大嫌い、ダービーに出場する馬や女性騎手を応援出来るって聞いたから来たのよ。』そう言って現れたのは、往年の大女優ジョーン・コリンズ。彼女は公の場で、銃反対を唱えているが、グロック社の馬のチャリティイベントにだけは参加している。
彼女が毛嫌いしているのはアダム・ランザが最後に自殺した
『サンディフック銃乱射事件』だ。
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前出のレオナは ’16年6月12日にフロリダ州オランドのゲイナイトクラブ襲撃事件の犯人がグロック17を使った事にふれて『このパーティーに参加したのは、製造メーカーとして責任は取って欲しいと思うからよ。』と発言。
だが企業の片腕であるデヴィットと共にセルフィーに映りこんでいる事については、メディアに対して口を閉ざしている。
グロック社のパーティーに、頻繁に顔を出すセレブで意外なのが、ヒュー・グラントだ。彼はプラベートジェントで現れ、日帰りで帰ったが、銃乱射事件を批判した彼が何故と思う人も多いだろう、
グラントは元自由民主党党員で、今はセレブをバッシングするフェイクニュースをたたくネットメディア『Hack Off』の編集長エヴァン・ハリスの紹介で、ここに来ていた。グロックには挨拶をした程度で、カウンターでハリスと飲んでいただけで、すぐに帰って行ったという。
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イースト・ロンドン大の犯罪心理学者のアンソニー・ガンターは、『ドラッグ・ディーラーの様に、誰がみても犯罪者と判る人間でなく、業界の大物のグレーゾーンに居る人間と写真に写る。売れないハリウッドセレブが、こざかしいマネをしているとしか思えないよ。』という。
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ガン・コントロール・ネットワーク会長のジル・マーシャル・アンドリュースは『セレブリティが、この様な会合にでるのは銃のロビイストに頼まれてか、出演作のスポンサーをつける為の金欲しさだ。そうでなければ、ありとあらゆる映画にグロック社が使われるわけがないだろう。』と嘆く。それほどグロック社のモデルは使われているのだろうか。
グロック社の拳銃が知られるようになったきっかけは、あの映画?
’83年に正式に国で軍用に採用されたグロック17だが、映画や海外ドラマでグロック社の拳銃が知られるようになったきっかけは『ダイ・ハードシリーズ』だ。
『ダイ・ハード2』で、テロリストたちが、独製『グロック7』という架空モデルを使用。空港のX線検査に引っかからない銃だとブルース・ウィリス演じるマクレーン刑事が怒鳴り込むシーンで有名になった。がモデルになったホンモノのグロック17は、スライドや銃身、弾薬などが金属製なので金属探知機に引っかかる。
が、シリーズ三作目では、連邦保安官と警察官がグロック17を、テロリストがグロック19を使用し、予告の4.0ではマクレーンも警察もモデル22を使用するという『グロック社オンパレード』だ。グロック社の宣伝の為に作られた様な映画だ。
『REDリターンズ』の予告でイ・ビョンホンが構える二丁拳銃は、グロック34だ。
『TIME/タイム』でジャスティン・ティンバーレイクと、キリアン・マーフィー演じるタイム・キーパーレオンが持ってるのは、グロック17のハーフシルバーモデル。
シュワルツェネッガーの映画は、グロックの拳銃がよく出て来る。『エンド・オブ・デイズ』では拳銃だけでなく台詞にまで登場し『イレイザー』、『ターミネーター3』にも同社の改造型の銃が出て来る。
映画の主要人物でなく脇役が使っているものも合わせると、実にどれだけの映画や海外ドラマに幅広く使われているのかと思われるのが、グロック社の拳銃なのだ。それだけに俳優がガストン・グロック本人の誕生日パーティーに渋々足を運ばざるを得ないのには理由がある。
ロビイストに言われてという事もあるだろうが、自分たちが出る映画の製作会社にも言われて仕方なくというのもある。
グロック社の拳銃は、殆どがポリマー樹脂で、加工に大きなエネルギーを必要とせず、形状が複雑なパーツでも短時間で大量成形が可能なため生産性は非常に高い。
経年劣化しにくいので耐候性・整備性もよく、熱伝導性が低いため、火傷や凍傷を負う心配がない事から重宝されていた。
ドアノブ作りからはじめ、社長個人の趣味で銃器メーカーにシフトした会社だが、実は、お家事情は、かなり揉めたのだ。それは何故か。
ガストン・クロックの元妻と息子たちは?
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ガストン・クロックが、離婚したのは’11年。
前の妻ヘルガ(’19年現在77歳)との間に、Jr(51歳)を筆頭に、ブリジット、ロバート、と2人の息子、1人の娘が居る。写真で見ると左上がJr、右上がロバート。左下がヘルガ、右下がブリジットだ。
’63年にビジネスをはじめ、’83年に銃製造メーカーになる時に、ヘルガは弁護士をつけて、株の配当から財産管理の分配もしてきたという。それがいつの間にか書き換えられていたばかりか、ガストンは国外に資産を隠していた事が発覚。
元々会社の売上の取り分は、15%はヘルガだったのだが、’11年の離婚当時には、1%になっていた事が発覚。裁判費用500万かけて、アトランタの連邦裁判所で裁判を起こしたのだった。
『父もこれ以上にないというぐらい優秀な弁護士を見つけてきてね。金で雇ったんだろうと思うけど。僕たちに経営権を放棄しろと行ってきた。はした金を渡すから関わるなとさ。実際に父親が設けていた金額を聞いたら、本当にはした金だったんだから、話にならないよ。』そう答えるのは末っ子のロバートだ。
彼曰く、父親に会社付の弁護士になるように言われ、それなりの愛情も注いでもらったから何も言わなかったが、銃で有名になった途端、父親は変わってしまったという。
『ボクたちからみれば父の銃はセミプロの領域だったんだ。それがこんなビジネスになるなんて思いもよらなかった。僕たちが小さい頃は、ドアノブやシャベルを売っている小さな会社だった。』
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息子たちがそういう会社も、今や1兆8000億円の売り上げを誇る、銃メーカーであり、本人は認めていないにしても所得隠しも問題になっていた。
だがグロックは、息子たちと元妻一人当たり、2億2000万円のはした金を渡し、以後のビジネスに一切かかわらない様に口止めしたのだった。
Jrは米国で洋服店を、ブリジットはベニスでペットショップを、ロバートはオーストリアでレストランを運営しているという。それぞれが父と無縁のビジネスを選んでいるのだ。『誰一人として恩恵は受けていないんだよ。』
The Glock Family Feud: Founder’s Ex-Wife and Kids Speak Out for the First Time