HBOのテレビシリーズ『トゥルーブラッド(’08年~)』でゲイのシェフを演じた、俳優ネルサン・エリスが、心不全でこの世を去った。享年39歳だった。
死因は、アルコール禁断症状とマネージャーが発表している。
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ハリウッド・リポーターを通じ、ネルサンの代理人、エミリー・ジェイソン・セインが発表した所によると、彼は長年、ドラッグとアルコールに苦しんでいて、これらをやめようとリハビリ施設に通っていたというのだ。
この事は『トゥルーブラッド』で共演していた、アナ・パキンや、ジョー・マンガニエルらも知らなかったと見られている。
アナ・パキンは、『彼はとても素晴らしい俳優。』と手放しで褒め、ジョー・マンガニエルは、ネルサンの突然の訃報に『心が押しつぶされそうだ。』と驚きと哀しみを隠しきれないでいた。
HBOは『ネルサンは、とても長い間我々の家族も同然だった。彼の演技は我々の記憶に深く刻まれるだろう。』と哀悼の意を表し、
原作者のアラン・ポールは『彼の才能は私を飽きさせることはなかった。彼と仕事ができたのを誇りに思う』と早すぎた死を惜しんでいた。
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家族によると、ネルサンは、ドラッグやアルコールをやめようと、リハビリ施設に入ったものの、禁断症状が出て、7月はじめにNY・ブルックリンのWoodhul病院に入院。
家族、親族、そして代理人であるマネージャーが付き添った。
『ここに搬送された時にはすでに、ネルサンの腎臓機能は停止していて、肝臓は肥大し、血圧は乱高下していたわ。自分の体もコントロール出来なくなっていた。』
ネルサンは全身を蝕まれ、家族に看取られその生涯を終えた事になる。
ネルサン・エリスは、’78年11月30日、シカゴ生まれアラバマ育ち。
ジュリアード音楽院卒業で、一年先輩には『ゼロ・ダーク・サーティ』のジェシカ・チャスティンが居て、彼女もネルサンの突然の訃報に哀悼の意を送っている。
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アラン・ポールが企画したHBOの人気ヴァンパイアTVドラマ『トゥルー・ブラッド(’08年~)』でアナ・パキン演じる主人公が働くレストランのシェフ、ラファイエット・レイノルズ役で知られる様になる。
原作では、ラファイエッ役は死んでしまう事になっていたが、’09年にエミー賞を受賞したため、急遽彼の役は出演延長が決まった程、ドラマに影響力を及ぼす事になった。
ロバート・ダウニーJr,ジェレミー・フォックスと共演した『路上のソリスト』の傍役などから、脚光を浴びはじめ、リー・ダニエルズの『大統領の執事の涙(’13年)』では、マーティン・ルーサーキング・ジュニアを演じ話題となった。
映画では『ジェームス・ブラウン~最高の魂(ソウル)を持つ男~(’16年)』でチャドウィグ・ボーズマンがジェームス・ブラウンを演じ、ネルサン・エリスはジェームス・ブラウンの生涯の相棒というべきボビー・バードを演じ切った。
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共演したチャドウィグ・ボーズマンは、『今まで何度も名優と共演する機会はあったけれど、ネルサンは素晴らしい俳優だ。彼は全ての演技に良い意味でプラスアルファを付け加えている。スクリーン上で彼の演技を見るまで観客はなかなか気が付かないかもしれないね。』と褒めている。
実際銀幕でネルサンの映画を観たのは、この映画なのだが、さりげないのに上手いという印象があった。
遺作はまだ発表されていないが、テレビシリーズでは、ホームスをNYを舞台に置き換えたTVドラマ『エレメンタリー~ホームズ&ワトソンinNY』のシーズン5が最後になるだろう。
役柄はワトソン(ルーシー・リュー)の元患者で前科もののマフィア・シンウィル・ジョンソン役だ。
映画では待機作にホームコメディ『Little Boxes(’16年)』がある。
白人のカメラマンの妻ジーナ(メラニー・リンスキー)の仕事の都合で、黒人の夫マック(ネルサン・エリス)息子クラーク(アルマーニ・ジャクソン)は、NYからワシントンのローマという白人ばかりの小さな町に転勤になる。
が、そこで待っていたのは意外にも人種差別と、皮肉めいたからかいというもの。
クラークはクラスのオマセな女の子と友達になるが、最後はからかわれて酷い目に遭う。
そんな息子にネルサン演じる普段はグータラそうな父親が『どんな時でも自分を見失うな』という所がポイントの映画。
おそらく遺作となるのは、この映画か『True to the Game(原題)』というクライムサスペンスになる。
『ネルサンは、紳士で優しくて、心の強い子で、良き父であり、息子であり、良き孫で、良き甥で、皆の良き友達でした。皆が彼と知り合えてよかったと思えるような人だったのです。』
突然の訃報を遺族が発表する際、遺族がネルサンの生前の人柄について語ったこの言葉が、彼の生き様を物語っているだろう。
よく生きようとして、ドラッグやアルコールに手をだしたとしたならば、自分を犠牲にしていたのではないだろうか。
あまりにも早すぎる名優の死を悼むしかない。