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前回は、トム・クルーズ一家とサイエントロジーのつながりについて書いたが、今回はサイエントロジー信者として有名な他のセレブ。暴露した元信者であるドミンゴの義理の娘が、何故サイエントロジーに入団したのかを解き明かす。
死んだ息子を蘇らせようとしたトラヴォルタ
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ジョン・トラヴォルタと妻のケリー・プレストンが長年のサイエントロジストである事は業界内で有名だ。2人もまた『サイエントロジーなくして人生はありえない』と豪語している。
トラヴォルタは大の飛行機マニアで現在の自家用ジェットはボーイング707。自分の息子にジェットとつけた事。ジェットが産まれて2歳で川崎病と診断された事、16の時心臓発作で浴室で死亡した事は世間も知る事実だが、これから先は教団の中の人間しか知らない。
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世間ではトラヴォルタとケリーが、ジェット君を亡くした後の数年間を教団が支えてくれたとしているが、教団側はベテラン信者の対応に、頭を抱えていたという。
『トラヴォルタは、ジェットにセイタンを呼びもとせば蘇るはずだと言って聞かなかった。さすがに周りのサイエントロジストも、ジェット君の死は受け止めるべきだとトラヴォルタに説得するのに時間はかかったわ。』
サイエントロジーでは、人間は、体、心、セイタンで成り立ち、セイタンを鍛錬する事で、人間は磨かれ、現在直面する問題や過去のトラウマが取り除かれると言及している。そしてセイタンが抜けた人間は死ぬとされている。
またセイタンは、その人もしくは家族に縁があれば、身近な人の元に戻ってくると教団内で言われており、俗に言われる『運命』や『生まれ変わり』を教団内では、かつて縁のあった人のセイタンが自分の所に戻ってきた、と捉えている。
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実際にケリーは、第三子ベンジャミン(ベン)が産まれた時、公にはしていないが、『ジェットのセイタンがベンに帰ってきてくれた』と大喜びしたとサムは語った。
ジェイダ・ピンケット・スミスはサイエントロジストだった!
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トム・クルーズがウィル・スミスを執拗にサイエントロジーに誘おうとする度にウィルが『自分はバプテスト(プロテスタントの一派)だから』と、のらりくらりかわしているのを不思議に思った人はいるだろう。
『彼の妻、ジェイダ=ピンケット=スミスがサイエントロジストだからよ。彼女は子供のいるセレブを狙って勧誘してるわ。』サムは激白。
サムがLAからクリアウォーターにある本部に移った時、ジェイダ=ピンケット=スミスが、いつもいるのを目撃していた。彼女はセレブの子供たちがLAにあるサイエントロジー管轄の小学校『Delph』に通わされているのを見たという。
サムが勧誘の現場を見たのは、’00年前半。B級コメディ『最終絶叫計画』の監督脚本を務めるウェイアンズ兄弟の1人、キーネン・ウェイアンズと、妻で『イン・リビングカラー』に出演中のコメディ女優ダフィ・ウェイアンズが5人の子供たちをつれて本部にやってきた。
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ダフィはジェイダにサイエントロジーに入らないかと熱心に勧められ、勧められた時は、これで一流セレブの仲間入りを出来るとワクワクしていたという。『カーティス・アレイの二の舞が出るんだと思って必死で止めたのよ。』サムは語る。
サムは、ダフィが心躍るのも無理はなかったと言う。この時ウィルは妻に頼まれ、1億近いお金を『新しくサイエントロジーの小学校をサンタモニカに作る』といわれ寄付していたのだ。サムが覚えている理由は『私もジェイダに誘われ寄付に応じた一人だった、素晴らしいアイデアだと思い何の疑問も思わなかったわ。』
だがサイエントロジーの情報網は信者に閉ざされたまま。いつになっても小学校が出来たのかどうかのも知らされない。使途不明金として処理されたかもしれない。
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『この後に、ウィルが個人名義で、プライベートスクール New Village Leadership Academyを作ってるわ。』そこの役員としてジェイダとダフィも名前を連ねているが、ダフィは”05年にウェイアンズと離婚。サムはダフィと音信不通のままだ。
『サイエントロジー内で関わった人は、サイエントロジーというつながりがなくなると、音信不通になってしまう。それは人としてのつながりとはいえないわ。』
ビリオン・イヤー・コントラクトの女性は子供を産めない?
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一連のサイエントロジーの内部を激白した、三大テノールドミンゴの義理の娘、サム・ドミンゴは、いつから教団に関わったのか。
サムがサイエントロジーに入団したのは’87年の20の時、トム・クルーズがミミ・ロジャーズにサイエントロジーを紹介される前の話だ。
サムは22の時シー・オーグ契約を交わし、10億年契約(ビリオン・イヤー・コントラクト)を交わした。これは生まれ変わっても未来永劫サイエントロジーに忠誠を誓うというもの。この契約を交わしていながら脱退する脱退セレブが数多く現れ、脱退者は教団側から『悪魔』の様に罵られるのだから、教団側に非があるのは拒めない。
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サムは’92年に英国支部からLAに移り、スーパーバイザーになるためのトレーニングやオーディティングを積み、この通りセイタンレベルもあげていった。
教団内部での付き合いも密になり、LA本部のスポークスマン、マイク・ゴメスと結婚。だが妊娠してしまい、もぐりの医者を探して中絶する事に。
『教団の人間でもシー・オーグ契約を結んだ女性は妊娠してはいけない事になってるの。地球が汚れるって理由よ。そんな理由あるかしら。中絶するにも教団関係者は見て見ぬフリ。もぐりの医者を探して、ホームレスのフリをして中絶して貰った時は、泣くに泣けなかったわ。』
それから暫くして、教団のスポークスマンであるマイクは教団内から姿を消していて、複雑に暗号化された書類でサムの元に届いたのは一枚の離婚届だった。
『この一件をきっかけに本当は教団を抜けようと思った。でもこの書類を見て、背中に氷水を懸けられるほど恐ろしくなった。教団内部にはスパイが居て、私たちの行動を逐一監視してる人間がいるってことを。』
彼女が脱退するきっかけとなった、ドミンゴの息子、Jrと出逢ったのは、この後だった。
人並みの生活が許されないシー・オーグ
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三大テノール一家の中で、息子がサイエントロジストだったのは、長男のホセ、次男のJrだった。偉大なる父から自由になりたいという思いは判らないでもない、だがそのために高額なお金を払う必要はどこにあるのか、とサムは語る。
サムとJrの結婚は、教団内幹部は快く思っていなかった。そのためサムは結婚前にリハビリテーション・プロジェクト・フォース(RPF)を受けさせられる事になった。
サイエントロジーの数ある懲罰の中で一番重いとされるRPJは、数年間にわたり教団内の誰とも口を聞くことを許されず、パスポートなど身分証明に関わるもの、スマホや通帳なども取り上げられ、黒かグレーの囚人服を着せられ、朝7時に起床、夜の8時まで労働、夜の10時までオーディティングというハードスケジュールが組まれる。
懲罰施設は、サムがDailymailのインタビューに答えた所によるとハリウッド大通りにあるが、薄汚くゴミ溜めの様で、ネズミやゴキブリやダニがはい回る所に放り込まれるのだ。
耐えきれなくなったサムは施設の4階から飛び降り脱走を試みるが捕まり、2週間にわたり尋問を受け、ようやくパスポートを返して貰い、懲罰を解かれたという。
『シー・オーグをやめて普通の結婚をして子供が欲しい、といっただけよ。なのに、堕落した存在(Degraded Being)と軽蔑され、今まで受けてきたオーディティングや教材費をフリーローダ―・ビル(Freeloader Bill)として高額請求?悪徳保険会社に引っかかったのかと思ったわ。』
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そこまでして結婚したJrとの生活だったが、教団側の要請は厳しいものだった。教団側が欲していたのは、Jrの父、ドミンゴを広告塔にすることで、サムの教団内での存在をかろうじて許していたのだ。
サムはこの時に決意した『この教団には居られない。どう考えてもおかしい。他のセレブたち同様私も脱退する。』と。
金はもうないよ!気づくのが遅すぎた夫
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サムの義理の父ドミンゴはサイエントロジーを憎み、2人の息子を開放させるために、多額の寄付を行っていた。それがどういうわけか教団側にはカモととられ、Jrのセイタンレベルはたいした修練も積んでないにも関わらずアップしていったという。
『教団側は明らかに義父を広告塔に使いたがっていた、そんなことはさせまいと思ったわ。』
夫であるJrとは’06年に離婚し、子供だけでつながっているサム。夫はサイエントロジー内で妻であるサムが自分と結婚する前にスポークスマンと結婚していた事や中絶の事実も知らされていなかった。
何よりも自分が教団に居られる資本元が父親から出ている事すら知らなかったのだ『もうサイエントロジーに費やす金はないぞ!』と父に言われた時、Jrは青ざめたという。
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一方、サムは英国に戻り、元メンバーのマーティン・ラスバン、要注意人物として知られた元メンバーのマイク・リンダー(写真左:右は’18年8月に廃刊となったNYコミュニティ誌ヴィレッジ・ヴォイス編集長のトニー・オルデガ)と接触。すると24時間以内に英国オフィスから警告メールが届いた。
『ばかばかしいわ、って思ったの。サイエントロジーに居る限り私の自由はないって。』
彼女は翌日、三人の娘たちをサイエントロジーの学校に迎えに行き、荷物をまとめ、義理の父の家に亡命。義父であるドミンゴは『これだけ金を吸い取って何様だ』とクリアウォーターの本部に怒鳴りつけ、Jrを脱退させ、’09年に晴れて、サムとJrは教団を脱会する事が出来た。
だがドミンゴの長男ホセは未だにサイエントロジー本部に残り、広報役を務めている。サムはドミンゴ一家が集まる時は、サイエントロジーに居た時の話は決まって出てくるのだが、義父が機嫌を損ねるのは、当たり前だと話す。
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サムの長女パロマは22歳、ヴィクトリアは20、ダニエラは17だが、サムは娘たちがサイエントロジーに入団したいといえば、止めるとコメントしている。
『教団に22年居たからこそ判るの。教団に感謝していると言う人は、何かに依存しなければ生きていけない人。成功体験もそうよ。トム・クルーズが抜けられないのは、彼のキャリアはサイエントロジーでの成功体験に裏付けられているから。』
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彼女の言葉は現代人への警告ともとれるのではないだろうか。特定の趣味に依存しすぎて、その趣味をとってしまうと人生何をしていいのか判らないという人たちに、自由というものは、そんなものではないと道を示したのがサムなのだろう。