独立記念日の強盗！休日限定で空き巣に入るベテランの老強盗・お縄に

あたかも、その家に『前から住んでいる』かの様に振る舞い、宝石など金目のものを奪う老強盗が、’19年9月1日、レーバー・デイ（労働者の日）に逮捕された。

©NYPD

逮捕されたのは、マイアミ在住のサミュエル・サバティーノ(’19年現在・82歳）。米国の大きな記念日を狙って空き巣に入る事から『Forth of July Burglar（独立記念日の強盗）』というあだ名のついた、ベテランの老強盗だ。

逮捕したNY市警の警部補ケヴィン・ブレイクは、長年サバティーノを追い続けてきた捜査官の1人だった。

『独立記念日、感謝祭、クリスマス、ブラック・フライデー…どの休日も俺たちにとっては恐怖だったんだよ。米国のどこかでサバティーニが盗みを働いていて、オレたちは捕まえられなかったんだろうなって思っていたんだから。』

それ程まで、NY市警の捜査官を震え上がらせた連続強盗。どんな手口で、何年強盗を重ねてきたのか。

犯罪歴半世紀に及ぶ空き巣専門強盗

©Shutterstock/meunierd

サバティーノの犯罪履歴は、’60年代にさかのぼる。マフィアの下っ端だったのかと思うぐらい窃盗を繰り返し、刑務所を出たり入ったりしているので、犯罪履歴の方が多い。

『スキーマスクで顔を覆っている、いかにも犯罪者というルックスじゃないのがサバティーニの賢い所だ。犯行を実行する前の彼は、数か月前、近所に引っ越してきた、どこにでもいる老人を演出してるのさ。これじゃ特徴がつかめない。』ブレイク警部補は、何故サバティーニが長年逃げおおせたのか、その理由を語った。

若い頃は、窃盗をはたらいても面が割れたが、80をすぎた年寄りになると、誰も気に留めなくなる。そこを狙った。

’19年7月に、日本でも実在の銀行強盗フォレスト・タッカーをモデルにしたロバート・レッドフォード引退作『さらば愛しきアウトロー』という映画が公開されていた。

この映画でも、主人公のタッカーは、いかにも銀行強盗というマスクを被った行員を脅す強面ではなく、紳士で爽やかな初老の男性として描かれているのが判る。

サバティーニも、タッカーではないが、盗みに入る家やビルを決める時は調査に時間をかけていたという。不動産屋の広告を調べ、現地調査を独自に行い、住んでいる住人の所得を調べ、長期出張や休暇などで、空き家になるのを狙って金品を奪っていた。

ドアマンが居ても気づかれにくく、セキュリティが甘く、オートロックがない、別荘や、賃貸マンションを狙っていた。

『彼はジェームス・クレメントという別名でも通っていて、熱烈なファンも多く、前回の逮捕では、保釈金で釈放されるはずでした。それが仮釈放中に脱走し、行方知れずになっていたのです。』

メディアのインタビューに、そう説明するのは、NY地方検事補のレイチェル・ポリズナーだ。

前回の保釈という事は、同じ犯罪で一度捕まっていることになる、それはいつなのか。

保釈金は1億円

©Gabby Jones for The New York Times

実は、サバティーノは、金持ちの別荘を狙う窃盗を始めた’01年に、ドアマンに通報され失敗し、警察にお縄になり、15年の禁固刑を喰らっていた。

部屋のガス漏れをチェックするフリをして狙いを定めていた部屋に入り、ポケットには、40個あまりの宝石を入れていたのだから不自然極まりないだろう。

それ以来、窃盗に入るマンションや豪邸では、ドアマンに素性を疑われないよう、最新の注意を払っていた。

だが今回は、サバティーノが出入りしているマンションを張り込みしていた私服警官が、ドアマンと言い合いになっているのを目撃し、逮捕にこぎつけたという事だった。偶然とは言えラッキーだったかもしれない。

が、驚くべきなのは、サバティーノに家族がいる事だ。サバティーノには娘トリーナがいるのだが、彼女は父親の犯罪歴は知っていたものの、まだ父親が窃盗を続けていた事は知らなかったらしい。

『81よ、まだ泥棒をつづけているの。信じられない。そんなことが生きるモチベーションになってるなんて、あいた口が塞がらないわ。』トリーナは、父親がマイアミで引退したと思い込んでいたようだ。まさか父親が窃盗を働くために、再びNYに拠点を移していたとは知らなかったらしい。

地方検事補のポリズナーは、今回の犯罪を重く見ており、保釈金は1ミリオンドル（1億円）に設定している。この額は、ファンでも出せないだろう。

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