真冬の湖に落ち死んだ14歳の少年が、死後1時間後に自力で息を吹き返した奇跡の実話が映画化される。映画の題名は『Breakthrogh(原題名)』で、’19年4月11日、米国公開。
ネトフリ配信中のファミリーコメディ『ワンデイ 家族のうた』のマルセル・ルイスが主人公のジョン・スミスを演じる他、『THIS IS US 36歳 これから』のケイト役のクリッシー・メッツがジョンの母・ジョイスを演じ、父ブライアンをベテランのジョッシュ・ルーカスが、一家を支える牧師を『スパイダーマン3』や『ブラック・クランスマン』のトファー・グレイスが演じる事で話題沸騰中だ。
映画上映に先立ち、映画のモデルとなった主人公のジョン・スミスさん(現在18歳)が、一度は死の淵に立ちながらも元気である姿をメディアの前に見せ、映画が公開される事の喜びと、自分の身の上に4年前に起こった事を改めて話した。
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事の発端は、4年前の’15年1月。
ミズーリ州セントルイスに住む当時14歳の少年ジョン・スミスは、友達2人と真冬の凍った湖の傍で遊んでいた。
しかし突然氷が割れ、ジョンの友達2人は、かろうじて湖から脱出できたが、ジョンは溺れてしまった。ジョンの友人が救急車を呼んでジョンを引き上げた時には、ジョンは既に虫の息だった。
ジョンの母ジョイス(当時64歳)は、ジョンが病院に搬送された後、友人から電話で知らされ、病院に駆け付けたが、愛する息子の体は血の気もなく、灰色がかっていた。医師は呆然とするジョイスに『ありとあらゆる手は尽くしましたが…』とうなだれた。ジョイスは息子の体にすがって泣き崩れた。
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『神様、なんて事なの!私の息子をどうか、どうか返して頂戴…。』
するとどうだろう。数分後にジョンの心臓の鼓動が元通りになったというのだ。信じられない話だが事実だ。
ジョンが溺れ、救急車が現場にたどり着くまで15分、医師が措置をする時間45分、1時間以上経って、一度は死を宣告された息子が、数分後に死の淵からよみがえったのだ。
だがジョンの容態は油断ならなかった。万が一心臓が動いたとしても、脳死状態もしくは、脳障害が残り、一生植物人間になる確率が高かったのだ。健康な体に戻れる確率は、1%と宣告された。
ジョイスは敬虔なプロテスタントで、通う教会の牧師であるジェイソン・ノーブルに相談に行った。ノーブルは当時の事を振り返りこう語る。
『もしも息子が脳死状態や植物人間になってしまったなら、息子の生前の意志をくんで臓器移植にしてほしいと頼むとジョイスから言われていた。だが私としては、幼い頃から教会に通うジョンに神の御加護と奇跡が起きてほしかった。』
ノーブルは近隣の牧師たちを集め、ジョンが退院するまでの16日間、ずっと教会で祈り続けていた。
ノーブルさんの願いが届いたのだろうか、ジョンは、2日後に目を覚まし、1週間後に呼吸器を外し、コミュニケーションを取れるようになり、16日後に退院許可が下りたのだ。今は好きなバスケットボールに打ち込んでいる上、今回が俳優デビューだという。
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ジョンの母ジョイスさんは、息子の身の上に起こった事を、FaithWords社から『The Impossible』という本で上梓した所、ベストセラーに、20世紀FOXが映画化権を買い取り、この度映画になった。
映画の中で、ジョンを演じるのは’18年からネトフリ配信で始まったシットコム『ワンデイ~』でしか知名度のない子役の俳優だが、脇役が重要になる。母ジョイスを演じるクリッシー・メイツは、この役を演じる事に対し、こうコメントしていた。
『私たちは実生活の中で、いつか自分の身の上に奇跡が起こるんじゃないかって信じているじゃない。父親役のジョッシュとも話したのだけれどトラウマは時として人を強くするし、慈悲の心も引き出すって事を意識してこの役を演じたわ。』そして彼女は、この映画は、トファー・グレイス演じる牧師役も鍵となるのではないかと言っているので楽しみだ。
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では、ジョンの身の上に起こった『医師から死亡宣告された後に、蘇ってしまう』という例は他にもあるのだろうか。実はある上、正確な名前もあるのである。
これは『ラザロ症候群』と呼ばれ、これは新約聖書の『ヨハネの福音書11』から由来する。キリストがエルサレム郊外のベタニアを訪れた際、死後葬られて4日経ち布にくるまれたラザロに対し『ラザロよ、起きなさい』と言った所、ラザロがよみがえった所から来ている。
’82年に米国で初めて報告されてから現在まで40人近く症例が報告されているが、具体的要因や科学的根拠は未だに見つかっていない。
’14年11月14日には、ポーランドで91歳の、おばあちゃんが、病因で死を宣告され葬式までの間、遺体の入った棺を遺族の家に安置していた所、翌朝、死んだはずの、おばあちゃんが、棺桶を自力で開けて、台所でパンケーキを焼いていたという。死亡宣告からよみがえるまでの間、僅か11時間。笑い話なのか、新手のオカルトなのか判らない実話があったのだ。
遺族である、おばあちゃんの親族は腰を抜かし、死亡宣告をした医師を呼んだのだが、医師は『何が起こったのかしばらく全く理解できなかった。ただ立ち尽くすしかなかった。目の前にいるオバアサンが元気なのに裏切られた気分としか言いようがなかった。』と言ったという。しかも、このおばあさん。翌日から畑仕事に出てしまい、今も元気だという。
同年2月28日には、米ミシシッピ州で、78歳(当時)のウォルター・ウィリアムさんというオジイサンが、水曜に死亡宣告され、木曜に葬式を上げ、金曜に埋葬の予定が、金曜の朝に生き返ってしまったという話なのだ。
突然生き返った上、その後何事もなかったかの様に、ピンピンしているので、周りの者は唖然茫然。
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ラザロ症候群を引き起こす40人に共通しているのは、若い頃もしくは年寄になっても、体の負担にならない程度の運動をしている事が判明している事だったらしい。体が故障する程運動していたり、深酒、夜更かし、食べすぎ、ストレスをためるという事がなかったのがしいていえば、特徴として挙げられたという。
ジョンがラザロ症候群により、蘇った奇跡の映画『Breakthrough』の撮影は、カナダのマニトバ州・ウィニペグで3月に行われた。この映画の公開に先立ち、ジョンはプレス向けの挨拶で、こう話した。
『僕の使命は、神様が時として信じられない様な奇跡を起こしてくれたという事実をシェアする事だよ。本や映画を通してそれを判ってくれたらいいと思うんだ。』敬虔なクリスチャンならではの言葉だと思う。