表向きは元ミシュラン料理人、実は麻薬で稼ぐ老夫婦が、とうとうお縄になった。
逮捕されたのは、ロジャー&スーザン・クラーク(写真)。二人はスペインの高級住宅地・コスタ・ブランカに瀟洒な家を構えて暮らしていた。逮捕された時は、ロジャーの72歳の誕生日を祝っている最中だったという。
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3年前、この土地にやってきた夫妻をみた近所の人は、2人の素性に対し、何の疑いも持たなかった。当たり前だ。この写真を見て、疑いを持つ人がいるだろうか。
2人は、いかにも裕福な英国リタイア層という感じで、地元のゴルフクラブ、ヨガ、スピニングクラスに参加し、夜はビストロバーに出歩いた。最も地元の人々は、その金の『出所』に気付く事もなかったのだが。
コスタ・ブランカの中でも評判がよく、民度が高いリゾート地である、グアルダマル・デル・セグラに、すぐ馴染んだ2人。ただ駐在員の中には、薄々何か怪しいと感じていた人も居た様だ。
『クラーク夫妻は、以前どこに住んでいたか、中の良かった人を聞いても上手に話をそらしていた。まるで過去のない人に出逢った様だった。仕立てのいい服は着ていたけれど、洋服のバリエーションが少ないなと思ったのも気になったね。いつでも旅立てるように、家を綺麗に片付けている所も気になったよ。』
麻薬密売人も、足がつくのが判っていながら、住み心地の良さに心が惑わされ、居ついてしまったのだろうか。グアルダマル・デル・セグラに居た3年の間に捜査の手が伸びたのは間違いなかった。
麻薬密売人という職業柄大人しくしていればいいものの、彼らは住んでいる人の生活に馴染みすぎた為に、ロジャーの誕生日祝いとして、逮捕される一週間前に、3000ポンド(約43万円)かけてクルーズパーティーをしたのだ。クルーズ船Policia Judiciaria を借りてマルコ・ポーロ、バハマ、エセックスにまたがる船の旅だった。
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が、ここでロジャーはしくじった。ロジャーのスーツケースから9kg,末端価格にして2億円のコカインがみつかったのだ。
ロジャーは、元ミシュラン料理人で、バーミンガムに2つのレストランがあると、グアルダマル・デル・セグラの住民に自己紹介していたらしい。
実は彼の本国での職業はロンドンでトラック運転手。古くから2人を知る人間クラーク夫妻が逮捕されたニュースを聞いた時、こう言った。
『リスボンで、元トラック運転手の男が、麻薬所持で逮捕されて、その男が裕福な土地でウソをついていたと聞いた時、ああ、またかと思ったよ。クラーク夫妻は、同じ手口で富裕層をだましていたからな。』
Dailymailの取材に答えたリスボン在住の男性曰く、クラーク夫妻は、同じ手口で昔、ブタ箱に入っていたが、出所して同じ手口で人をだましているという。
クラーク夫妻が、前に同じ事をやって捕まったのは、15年前のノルウェイだった。その結果、ロジャーは懲役5年、スーザンは懲役4年の刑になったらしい『10年前に釈放されたのだから、それぐらいにスペインの富裕層に狙いを定めたんだろうと思うよ。』
グアルダマル・デル・セグラの住民の住民もバカではない。休暇の度に、夫妻が大きなボストンバックを抱え、出たり入ったりするさまを目撃していた。だが彼らは富裕層でお金には困っていない。まさかそのバックに麻薬が入っているとは思わなかっただけだったのだ。
クラーク夫妻は、実は初婚ではない。奥さんのスーザンはバツイチで、はじめに結婚した売れない俳優との間に生まれた2人の子供はすでに成人している。
スーザンがロジャーに出逢ったのは、離婚し、子育てが一段落した頃で『何もかもから取り残され、燃え尽きた感』があった頃だった。秘書として勤めていた時にロジャーと選んだ彼女は、子供たちよりもロジャーとの人生を選んでしまう。彼女をよく知るかつての会社の同僚は『彼女は親戚との付き合いを大事にするけれど、思えばあればすべての間違いだった』と嘆く。
当然の事ながら、スーザンの子供は再婚に猛反対。相手は欧州を流しで走っているトラックドライバーだったのだから。
ロジャーの本名はロジャー・バトンだが、彼が姓をスーザンの名前に変える事で、何とか子供たちの反対を乗り越える事は出来たものの、それ以降、麻薬密売に走るまでに、二人
が英国各地を転々とした数年はかつての同僚や友人たちにも不明だ。
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グアルダマル・デル・セグラでハウスクリーニングサービスを営む、ポール・クレイヴンは、ロジャーに、今は何をやってるの、と思い切って聞いてみたことがあるという。すると彼はパイナップルなどトロピカルフルーツを輸出する会社を手掛けていると答えていたという。こんな答えにも何の疑問も持たないのだから、この島の人もおかしいと思うのだが。
だがポールは、しばらくして妻のポーリーンから、ロジャーの家にあるスーツケースから、おかしな匂いがするから、クリーニングを承るのをやめたらどうかと言われ、それ以来関係を絶ったというのだ。『思えばあのスーツケースは、ハロッズで買ったと言ったけど、コカインが入っていたかもしれないよね。妻のカンが正しかったのに驚いたよ。』
他にも、ロジャーが欧州出身であるにも関わらず現金決済にこだわった事や、スーザンが写真に写りたがらない事も、逮捕の引き金となった。
スーザンの親族が最後に彼女を見たのは’13年。おそらくスペインに移住する前だったと見られている。スーザンとロジャーは別々の公判にかけられ、スーザンは築100年の刑務所に収監されているが、収監後すぐに高血圧の発作に見舞われ、病院に救急搬送された。
残されたロジャーは、スーザンを自分の人生の巻き添えにしてしまったとメディアに対し語っている。『彼女はオレの様な根っからの泥棒じゃない。ただ人生を楽しみたかっただけなんだ。』