8月1日は『バイキング(ブッフェスタイルレストラン)の日』なのだそうだ。
今やホテルだけでなく、ファミレスや居酒屋、個人経営のレストランにまで飲み放題、食べ放題が広がったが、日本で最初に、この食事のスタイルを提供したのは帝国ホテル。
今年で帝国ホテルが、ビュッフェスタイルレストラン『インペリアル・バイキング』をオープンさせて早60周年となる。
そもそも帝国ホテルが、このサービスを始めた理由というのは、どこにあるのだろうか。
1:新館の目玉にするつもりだった
帝国ホテルが、ビュッフェスタイルレストランをはじめたきっかけは、ホテルの新館である『第二新館』のオープンを控えた1957年。
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時の社長・犬丸徹三氏は、新館の目玉として目新しいレストランを作ろうとしていた。
だが普通のレストランでは面白くない。もはや戦後ではない。これからの世の中、華やかな客が必要だと考えた末に、犬丸氏が目をつけたのが、北欧料理のスモーガスボード(スウェーデン語でパンとバターのテーブルの意)。
スモーガズボードは、大皿に盛られた料理を、各人が好きなものを、好きなだけ取って食べる料理だった。
犬丸氏は、当時パリのオテル・リッツで研修中だった、村上信夫氏(現・帝国ホテル料理長)に、スモーガスボードについて研究させた。
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翌年、1958年、デンマークからシェフをはじめ、3名の現地スタッフと、帰国した村上氏が、監修し、本格的なスモーガスボードレストランが、8月にオープン。
ではなぜ『食べ放題』でもなく、『スモーガズボードレストラン』にもならず、『バイキング』になったのか。
2:バイキングの名は社内公募?
スモーガスボードレストランでは、従業員もお客も覚えられないだろうという事で、この新しいスタイルのレストランについて犬丸は、社内公募で名前を募った。
そして決まったのは『インペリアル・バイキング』。
バイキングという名前は当時上映されていたカーク・ダグラス主演の同名アドベンチャー映画からで、社内公募だったという。この映画の中で、カークら海賊たちが豪快に食事をするシーンがあり、そこからインスパイアを得たというのがはじまりだ。
まさかこんな形で日本に定着するとは思いもしなかっただろう。
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今、帝国ホテルのインペリアル・バイキングは、本館17階に格上げされ、200席の店内は、フランス料理を基本とした洋食メニューが常時40種類以上揃っている。
年齢制限がないので、夏休みや年末は、ランチ、ディナー共々家族連れでにぎわい、さながらファミレス状態となり、平日でもバイキングスタート前は、ホテルの前に黒山の集りが出来る程だ。
帝国ホテルでは、4年前から『バイキング・コンシェルジュ』を配置。おすすめの料理や飲み物の紹介をしてくれる。
コンシェルジュ曰く『少量ずつ、ホテル伝統のメニューを堪能できるのが、バイキングの醍醐味。一度にたくさんとらず、少しづつ取って味わうといいと思います。』という事だった。
とは言っても、こうした場所に家族連れに囲まれると、ついつい『モトをとらなくては』と気がせいて躍起になってしまう。
そうしないための秘訣は?そして、この帝国ホテルのバイキング、はじまった当時のお値段はいくらぐらいだったのだろうか。
3:料金は一泊の宿泊費と同じだった?
今だと『たかが食べ放題』と思うかもしれないが、60年前、帝国ホテルがインペリアル・バイキングを始めた当時は、一食分=ホテル一泊相当だったという。
大学の初任給が13600円だった時代に、ランチバイキングが1200円で、ディナーが1500円だったのだ。
今の貨幣価値に換算すると、有名なバレエ団のチケットで、一番いい席が取れると考えればよい。
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それだけに60年前のメニューは、普通ではお目にかかれない食材もチラホラと出てきた。
キャビアの乗ったオムレツ、伊勢海老の水煮、当時では珍しかったブルーチーズなど、フランス料理顔負けの料理が出たので、長嶋茂雄ら有名人が足しげく通っていたという。
ちなみに、今は『ホテルのバイキングなら、これをたべなきゃ』というローストビーフワゴンも、このホテルが初めてだった。
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今でも、そのエスプリはきちんと受け継がれており、リピーターも多い帝国ホテルのバイキング。
今年は生誕60周年のイベントが7月30日~8月1日まで開かれるのだが、既に予約で満席だという。
8月20日(月)~31日(金)に開かれる『バイキング・コンシェルジュと学ぶテーブルマナー<平日1日5組限定>』は、まだ余裕がありそうだ。
ホテルの食べ放題というと、ランチとディナーしか思い浮かばず、朝食バイキングは宿泊者のみというイメージがあるかもしれない。
だが、帝国ホテルの朝食バイキングは、外部から食べにくる人も多いのだそうだ。
昼や夜が、元を取ろうとする家族連れや、女子会仲間で、これからの季節、にぎわう事もあるかもしれない、ホテルバイキング,。
おひとり様やビジネスマンに朝食が人気があるという、何故か。
4:朝活として指名される、朝食バイキング
帝国ホテルでの朝食は、企業のトップや、異業種のビジネスマンが、始業前に1時間、食事を食べながら『朝活』に臨む場となっている。
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帝国ホテルの朝バイキングは4300円なのだが、朝8時の時間帯だと、さすがにマナーの悪い客も居ない事から、おひとり様の女性旅行客の利用も多いそうだ。
量もランチやディナーで食べきれない人向けで、私としては、これだけでも十分満足できる。
いかがだろうか。
今年の夏は、バイキング生誕の地で、食べ放題というコースもいいかもしれない。