お金持ちの家の近くに住んでいたら『おこぼれ』が貰えるかもしれない。実際に『金持ちのおこぼれ』を売りまくって生活している人が米国に居る。その稼ぎっぷりたるや、テンバイヤー真っ青だ。
©Bloomberg via GettyImages
元空軍の男がフェイスブックCEO・マーク・ザッカーバーグ邸のゴミあさりをして週300ドル(約33000円)稼いでいる事が、New York TimesやDailymailの取材で判明した。
わざわざザッカーバーグ邸に行き、ゴミあさりをしてると不審者と間違われ、つまみだされるだろうが、今回『ゴミあさりで儲けている』と取材に応じた男性が、つまみだされないのには様々な理由がある事が判明した。
掃除機、コーヒーマシン、ブランドもののデニム…ゴミと思えない掘り出し物
ザッカーバーグ邸のゴミからお宝を見つけて売っているのは、元空軍のジェイク・オルタさん(56)。
©JIM WILLSON/New York Times/Re
政府の家賃補助が出るボロアパートに住んでいて、日本でいえば生活保護になるのだが、そのアパートがなんとザッカーバーグ邸の3ブロック先にあるのだ。豪邸と生活保護者が同じ地域に住んでいるという事事態、地域格差がありすぎると思うのだが、ここはカリフォルニア・サンフランシスコ。地域格差が激しい地域として有名だ。
ザッカーバーグといえば、資産総額に比べて質素な家に住んでいて、そこから歩いて通勤する姿をよく目撃されている。ザッカーバーグ邸は、サンフランシスコミッション地区にあり、’11年購入時は日本円にして10億円だったが、現在はその1.5倍に跳ね上がっている。
©Google
とはいえ、ゴミあさりをする、オルタさんからみればザッカーバーグの家は『宝の山』だ。サンフランシスコでは最も収入が高いのは医師で、次に企業のCEOだ。彼らの年収は平均2000万前後になっている。その一方で一番低い農業従事者や、介護職員の平均年収は300万未満なのだから、やってられないだろう。
ザッカーバーグの家から毎週毎週ガラクタの様に新品同様の家電製品や生活必需品が捨てられるのを見て、オルタさんは、ひらめいた。これはもったいない。必要としている人に売ればいいじゃないか。
オルタさん曰く、1日平均3000円~4000円、週平均33000円のものが、ゴミの中から見つかり、売れるというのだ。『これだけ売れるものを何のためらいもなしに捨てられるよな。』オルタさんはNew York Timesのインタビューに悪びれもなく答えた。
©nytimes.com
日本でも廃品回収の日にゴミあさりに来ている自称トレジャーハンターのおじさんが居るが、そんな酔狂おじさんたちの次元ではない。オルタさんは、ゴミをあさって、そのままお金になりそうなものを売りさばくのではなく、きちんと状態をよくしてから売っている。
使われていないサイクロン掃除機、イオンドライヤー、コーヒーマシン、これらのものを拾ってきて、動作確認し、修理できそうな所があれば、自分で修理しフリーマーケットで売っている。そこはさすが元空軍。修理はお手のものだ。
オルタさんが次に拾ってきたのはメンズのデザイナーズジーンズ、新品の仕立てのよいジャケット、ナイキのスニーカー、ロードバイクだった。『これって誰かからプレゼントで貰ったけれど、要らないから捨てるって感覚なのかな。もったいないよね。』その他にもオルタさんが、ゴミあさりをして儲ける時のポリシーがあるという。それは何だろうか。
ネットオークションは使わない、レディースや子供のおもちゃは売らない
オルタさんは、こうして見つけたものを『お宝』という様にしている。そんな彼のやり方に共感する人が少しづつ現れ、今ではオルタさんのフリマやガレージセールの手伝いに来る男性が数人いる。
そんなオルタさんが売らない、手を付けないと決めているのが、女性ものと子供のものだ。『婦人服や化粧品は僕じゃさっぱり判らないからね。子供のおもちゃは、いつか飽きられてしまう。それが嫌だから手を付けないようにしてるよ。』
©JIM WILLSON/New York Times/Re
彼がゴミの山から見つけるようにしているのは、生活で必要だと思えるものや、うるおいが出ると思えるものだという。ipadやスマホ、腕時計もゴミの中に混じっているのを見た時『これは修理して売れる』と思い、拾ってガラクタ市に持っていくと、すぐに売れたという。
オルタさんのフォロワーは彼を『宝をみつける凄い人』と尊敬していて『修理すれば末永く使う事が出来て、なおかつ喜んでもらえるものを見つけるのがうまい』と褒めている。
そんなオルタさん、元空軍の退役軍人であれば恩給も貰え、それなりに悠々自適の人生も送ってるはずなのだが、何故生活保護の身なのだろうか。
戦争に翻弄され、妻と離婚、アル中に、たどり着いた先でホームレスに
オルタさんは、米テキサス州サンアントニオうまれ。空軍に12年在籍し、湾岸戦争で’91年にペルシャ湾に派遣され、その後ドイツ、韓国、サウジアラビアの空軍基地に在籍した後、退役した。
退役したオルタさんを苦しめたのは戦場で負った心の傷からくるPTSDとアルコール中毒だった。恩給を酒代に使い込むようになり、妻からは三行半を下され、ホームレスとなり、5年前に流れ着いたのが、サンフランシスコだった。
©JIM WILLSON/New York Times/Re
5年前に、ホームレスになった退役軍人を支援する会の協力を得て、今のアパートに入居する事が出来たのだが、まさかゴミあさりをする羽目になるとは思いもよらなかったらしい。
カリフォルニアでゴミあさりは違法だ。もっとも合法であっても、やるべき事ではないのだが。
豪州の写真家、Nick Marzanoは、自身が提携している写真誌『Misson Gold』にオルタさんを取り上げた。
『彼のやっている事は法律上違法だ。だが人情でみれば彼のやっている事は市民サービスといえるんじゃないかな。地球の資源は未来からの借り物なのだし。オルタは巧く考えてリサイクルしていると思えば、ゴミあさりもムダじゃないよ。』
In San Francisco, Making a Living From Your Billionaire Neighbor’s Trash