国内線で、クルーが酔っ払い客に絡まれる客は、たまにある。乗客も『テロに比べたら命を狙われることもないしマシ』という感覚で、ヘッドフォンをして寝ている事も多いだろう。
大抵は、被害を被った方は迷惑、動画を見ている方にとってオモシロネタで済まされそうな機内の泥酔客による乱闘騒ぎだが、容疑者が暴力沙汰で、地元警察が出動した挙句に、容疑者がFBIに連行されたとなれば、話は別だ。
今週の水曜日、カリブ海のヴァージン諸島最大の島・セント・クロイ島から国内線に乗った男性客が、機内で泥酔状態になった挙句、乱闘騒ぎを起こし、マイアミで降ろされた挙句、FBIに身元を引き渡されるという事件があった。
FBIによると、男はセント・クロイ島出身の、ジェイソン・フェリックス。
写真で、左の白い帽子に黒シャツで、男性FAに指をさし、イチャモンをつけているのがジェイソンだ。後の方では、白い帽子の上にさらに黒い帽子をかぶったり、グラサンまでつけている。
©Bill Bolduc/Youtube
ジェイソンは機内で、ぐてんぐてんに酔っぱらった末に、男性FAに、ビールはもうねぇのか!と絡んだ末に、FAにビールサービスを断られ乱闘事件に発展した。FAだけが対応していた時は、ジェイソンの暴言で収まっていたものの、ジェイソンの暴言に耐えかねた周囲の乗客が、彼を押さえつけようとした所から乱闘騒ぎになった。
©Bill Bolduc/Youtube
一部始終が、機内でのオフレコに終わらなかった理由は、乗客の何人かが、動画撮影していて、その様子をYoutubeにアップしていたからだ。状況証拠が残った以上、文句はいえない。そんな事をしているヒマがあったら乱闘を止めろよと言いたい所だが、動画を見る限りでは、どうも収まらなかった様子がうかがえる。
ジェイソンは、暴言を吐きまくり、なだめようとしたり、押さえつけようとする乗客を、ぼんぼんはねのけ、毅然と対応するFAに再び、突っかかろうとしていた。そこに助太刀よろしく現れたのが、ブルーのチェックのポロシャツを着たいかつい黒人の男だった。
©Bill Bolduc/Youtube
『お前にやるビールはねぇゼ』
『てめェはオレのバーテンダーかよ!』
『そうさ、オレはお前のバーテンダーだ!文句あるのか、ボケ!』
ジェイソンにタイマンを挑んだこの男が乱闘に再び火をつけたせいで、機内で再び乱闘が始まった。今度はFAは、青ポロTとジェイソンの二人を押さえつけなければいけない羽目になった。
©Bill Bolduc/Youtube
ジェイソンは、小一時間ほど、ボカスカ殴り合い、暴言を吐き散らした末に、FAにいさめられ、機長が来た所で、ようやく自分の席に座った。怯えて彼をチョロチョロみている他の乗客に対して『してやったぜ!』とワケのわからない捨て台詞を残して。
事件の起きたアメリカンエアライン1293機は、マイアミに着陸後、マイアミの地元警察にジェイソンの身柄を引き渡すこととなった。ジェイソンは、この通り当初は機内から降りることをシブったが、最終的に降りざるをえなくなった。
動画をYoutubeにアップしたBolduc曰く、他の乗客も何とかして事態を収めようと必死だった事に関心したという。『自分に関係のない事なら無関心を貫く人って多いよね。それを団結して収めようとするのだから、今の世の中珍しいよ。』
何よりも彼が関心したのは、アメリカン・エアラインの男性FAのプロ意識だったそうだ。『彼は暴言、暴力、客という名の権力の限りをふるい続けたジェイソンに対し紳士かつ毅然な対応を取り続けた。他との乗客の間で乱闘になった時もそうだ。これには頭が下がるよ。』
©Bill Bolduc/Youtube
ただ一つ、彼は今回の事件で残念な事があるという。
『ジェイソンぐらい泥酔している人は、搭乗前の空港のチェックでわかるはずだよね。機内で飲む少量のビールで酔わないはずだ。テロリスト対策では、差別的とも思える規制をしている一方で、暴力沙汰を起こす泥酔客を見逃す米国の規制はおかしいと思うよ。』
©Bill Bolduc/Youtube
ジェイソンは、ヴァージン諸島セント・クロイ島出身だが、セント・クロイ島は、他のヴァージン諸島に比べ、経済格差が目立つ島である。
貧困が問題となり、’05年にヴァージン諸島の自治領から切り離され、米国自治領となった。こうした問題のひずみもジェイソンの暴力事件につながっていると言えるのではないだろうか。