アムロと言っても、安室ちゃんでもなければ『機動戦士ガンダム』ことファーストガンダムのアムロじゃない。このオジサンだ。
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’18年ブラジル大統領選で勝ったアンドレス・マヌエル・ロペスオブラドール(65)。名前長いのでトップ、ミドル、ファミリーネームを省略したニックネーム『アムロ(Amlo)』と呼ばれている。
彼は大統領就任後、一月がたったメディア向けの記者会見で、ガーディアン誌の取材に対し、大統領に就任して僅か1カ月で23000ドル(約250万)節約したと発表した。
アムロ氏は’00年から五年間メキシコ市長を務めていた時から倹約を身上とする政治家として知られていた。市長時代に愛用していた車は日産小型セダンのツル(サニーの旧モデル・S13)であり、国内で一番安価で燃費がよく、使い勝手の良いものだという理由で乗っていたという。
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そんなアムロ氏、実はお金にそんなに興味がないのだという。大統領の邸宅は、延床面積3500㎡のお屋敷で、ホワイトハウスの5,100 m²に満たないかもしれない。そこにアムロ氏は自分の両親、4人の子供と共に住んでいる。
12月1日に大統領に正式就任するまでは、市内のアパートに妻と共に住んでいたアムロ氏、就任一年目で65000ドル(705万)節約すると公言してるのだ。就任半年足らずで250万の節約を達成してるので、何か節約できるものはないかと企んでいるのだろう。
ファーストレディであり作家のベアトリス・ グティエレス・ミュラーは、作家活動やファーストレディとしての活動だけで、今年一年で72000ドル(780万)稼ぐと言われている。ちなみに再婚で、ミューラーとアムロ氏は二回り以上歳が違う。
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ちなみに705万も一年間で節約する第一弾は、エアフォースワンを売りとばした事だ。メキシコだからエアフォースワンと言わず、大統領専用旅客機と言ってるんだろうが、数々の事故を起こしているにも関わらず国賓扱いになっていたヴァリク・ブラジルや、アエロメヒコの事件にも、愛想が尽きているのだろう。
事故を起こしまくりの飛行機会社を作るのは汚職まみれの国政のせいだと言わんがばかりに、みせしめとして売りとばし、公務ではクオリティの高い他社の安いエコノミーに乗ると公言。
大統領専用車は中古のフォルクスワーゲン・ジェッタだ。この通り庶民の車で大統領が乗ってると思わない。
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4日の金曜日の記者会見でアムロ大統領は『私はクレカは持たないんだよ』と、まさかのな発言をした。それだけじゃぁない。これだけ始末屋なのだから預金通帳の残高見てニンマリしているタイプなのかと思いきや、ポイントカードにも興味がなければ、預金残高もみてないという。おそらくファーストレディである奥さんがきちんと管理していたのだろう。
そんなアムロ大統領、昨年の7月1日に行われた大統領選の選挙結果で大統領になったのだが、それまでの道のりはどんなものだったのだろうか。
アムロ大統領は、’53年11月12日、メキシコ・タバスコ州生まれ。
メキシコシティのメキシコ国立自治大学(UNAM)卒業後、’70年代に、当時の第一党・制度的革命党(PRI)に入党。上院議員のカルロス・ペリセールの選挙活動に参加した事から政治家への道を歩み始めた。
だが地元の先住民支援、消費者教育に目覚め、民主化運動に参加した事からPRIを離脱。’89年、民主革命党(PRD)からタバスコ州委員長、’96年には全国委員長、’00年にメキシコ市長となった。
元メキシコ・コカコーラ社長のフォックス大統領と対立しながら、徐々に政治家としての知名度を上げていった。
アムロ氏が大統領出馬の意思を固めたのは、’06年。最初の選挙ではフォックス大統領を罵倒した言葉がマイナスとなり、人気はあったものの当選につながらなかった。二度目の時も、PRIのペニャニエト候補に8%以上の差をつけられて敗北。今回は三度目の正直となり、PRDから分裂して結成された国民再生運動(Morena)の候補として出馬した。
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アムロ氏が当選した事で、過去100年間の大部分PRIが政権を支配していたメキシコ政権の流れが変わると言われている。
大統領選は7月1日に行われ、翌日の2日はサッカー・ワールドカップだった。メキシコ国民にとってワールドカップは国をあげてのお祭りで、飛行機の管制塔職員でさえ指示を忘れてしまうという、とんでもない話になるのだ。そんな中、アムロ氏の得票率は60%だったのだから、ワールドカップ以上に、汚職まみれの現政治を是正したいという思いの方が強かったとも言える。
アムロ氏は、汚職撲滅を選挙公約の柱に掲げて立候補。与党たちはアムロ氏に対し大衆迎合で舵取りは不可能とネガティブキャンペーンを行ったが、効果はなかった。
今回の大統領選の有権者数は約8800万。大統領のほか、上院議員128人、下院500人がそれぞれ改選され、州など自治体レベルの選挙も今回実施された。その一方で立候補者が48人も殺されるという歴代稀に見る事ない悲惨な選挙となった。殺された内訳は以下の図の通りだが、ゲレロ州では14人の候補者が殺されるという悲惨な事件が起きている。
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7月1日の大統領選の開票で、主要な対立候補たちは敗北を認め、アムロ氏を祝福。
次点となる国民行動党(PAN)のリカルド・アナヤ候補は『彼の勝利を認める。お祝いを述べたい。メキシコのため、彼が大きな成功を収められるよう願う』と述べた。アナヤ氏とアムロ氏の比率は以下の図の通りだ。
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アムロ氏は、汚職の撤廃と節制を1年目の公約としてあげ、米国との関係の改善も目指すとしている。
メキシコでは、貿易と移民問題で罵倒しまくるトランプが’16年に大統領になって以来、米国とメキシコの関係は、ひずみが生じている。
が、トランプはアムロ氏の当選のニュースを聞いた途端、ツイッターで
『メキシコの次期大統領になったアンドレス・マヌエル・ロペスオブラドール氏にお祝いを言いたい。彼と協力できるのをとても楽しみにしている。合衆国とメキシコ両方にメリットがあるたくさんの課題がある!』と、しゃあしゃあとコメント。口先だけで言うのは簡単だ。この人はクビも友好関係も口先だけなのだから、とんでもない。
Congratulations to Andres Manuel Lopez Obrador on becoming the next President of Mexico. I look very much forward to working with him. There is much to be done that will benefit both the United States and Mexico!
— Donald J. Trump (@realDonaldTrump) 2018年7月2日
そんなトランプに対してアムロ氏は冷静だ。トランプに対してアムロ氏は『分別をつけさせる』と公言していた。
近年まれにみる事がない節約大統領。
お手並み拝見はこれからだ。
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