米国の中でも最重要機密を扱うとされている軍事基地がニューメキシコ州にあるカートランド空軍基地である。
にも関わらず、何かと都市伝説や事件が起こる、この空軍基地。35年前に、この基地に在籍しNATOに派遣されていた分析官が謎の失踪を遂げていた。空軍は冷戦時にソ連に亡命したかもしれないとし、行方不明者扱いしていたが、先週、その人物が全くの偽名でカリフォルニア州に住んでいた事が発覚したのだ。
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偽名を使い、カリフォルニア州に住んでいた事が判ったのは、元空軍兵士のウィリアム・ハワード・ホッジ分析官(66)。
ホッジ分析官は、身柄を同州のトラヴィス空軍基地に拘束されているが、彼曰く、何故失踪したかというと、何者かに連れ去られたのでも亡命されたのでもなく、政治的影響を受けたのでもないと説明した。では何か任務や軍にいる事が嫌になったからというのである。
軍に入隊すれば、様々な恩恵のある米国内で、軍エリートがこの様な発言をする事が爆弾発言ともいえるのだが、彼の任務は、現在、各国から追われる身である、エドワード・スノーデンの先駆けともいえるものであった。
ホッジは空軍に分析官として入隊。その腕をかわれ冷戦時代にNATO(北大西洋条約機構)の分析官として米国から派遣された。
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時は、1980年代前半、ホッジはオランダにNATOの要請により、東欧諸国への監視システムを配置。その仕事ぶりは完璧とされていた。だが彼は次第に任務に対して精神的疲労と罪悪感に苛まされる様になる。
彼の任務は冷戦時代に危険人物とみなされた人物の監視だった。彼、彼女らの多くは政府に政治的思想が危険というだけで監視対象になった人物で、ホッジの目から見てみると、そうではない人々が多かったからだ。
他人のプライバシーに、ずけずけと入り込む任務にホッジは身も心も疲れ果てていた。
ホッジは、1983年に、銀行から28000ドルを引き落とし、欧州旅行に行くと言ったきり、米国に戻ってこなくなった。空軍当局は、旅行中にホッジが何者かに拉致されたのでは、と必死で探したが、そうではなかったのだ。
この時代、元MI5のスパイであるジョン・ル・カレ原作の『裏切りのサーカス』の様な事が起こっていたとしてもおかしくなかった。当局はホッジがソ連に寝返ったと思っていた。
この頃、カートランドをはじめとする米国の重要機密のある空軍基地には、UFOが墜落する、もしくは領空侵犯を冒すという都市伝説まがいの報告書がいくつも寄せられていた。
カートランドでUFOの上空侵犯事件が起きたのは、1980年8月8日。
同基地の司令官エドワード少佐が提出した報告書によると、同基地の兵器倉庫を警備していた警備兵が、真夜中にも関わらず強い光を目撃。近づいてみると、そこには大きな円盤状の物体が着陸していたのという。
もちろん、彼一人の報告だけでは信憑性がないので、米軍は特別調査部から人員を派遣し、徹底的に調査した結果、同基地、同時刻で他に三人の目撃証言が得られた事。その円盤を見た後に報告しようにも、無線を使えず、物体は猛スピードで空に飛び立った事から、UFOである事が事実として承認された。
この様な噂が報告が軍に正式にされていた時期でもあったので、ホッジの失踪には、UFO説までささやかれた事もあった。
ホッジが偽名を使い、長年ひっそりと影をひそめ、何も話さないのには理由があるのだろう。
彼がかつて所属していたカートランド空軍基地をはじめとする最新鋭の軍事基地はすべて地下道でつながっており、カートランドの空軍基地では、電子レンジに使われるマイクロ波を利用した空中発射迎撃ミサイル『CHAMP』が昨年12月開発された。
10年前も、米国はグリーンランドにあるチューレ米空軍基地の近くに、’68年に沈没した核兵器搭載の爆撃機が見つからなかったので、捜索を中止するという政府広報を出していた。
核兵器から出た放射能はやがて、グリーンランドの永久凍土を汚染し、世界の汚染につながる。ソ連に対抗してやっていた戦闘配備が地球を汚している事になったのだ。この様な事実も長々と隠ぺいされていた。
スノーデンは、国が国民のデータを思いのまま使っている事実を身の危険を冒してまで知らしめたが、ホッジが口を閉ざしている理由は、分析官時代に、それ以上に恐ろしい事に直面したからかもしれない。
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ホッジは、空軍基地で裁判を待つ身だが、良心に従い、軍を去ったのであれば、そっとした方が良いのではないだろうか。
スノーデンの様に自分が握っている秘密をメディアに暴露するわけでもない。彼が望んでいるのは、一市民としての平穏無事な生活なのだから。
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