元出版社勤務で2児の母であるソフィア・ラドロック・マイルス（31）は、怒りを通り越して疲れ果てていた。
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夫で社長秘書のアレックス(28)は、幼い子供たちが起きる前に出勤し、寝静まってから帰ってくる日々。夫婦間のろくな会話もない。
そんな状態でも彼女が別れないのは、彼女が両親の離婚の犠牲者だからだ。
『思春期にはアルコールに溺れ、リスカもやった。後になって考えたら愛されない自分が惨めでならかったんだと思う。でも自分の子供はそんな目に遭わせなくない。』
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ソフィアの母は、彼女が9つの時に彼女をつれて外国に渡った。帰国後ソフィアの両親はうまくいかず離婚。ソフィアは寄宿学校に入れられ荒んだ生活を送った。
彼女は、自分自身を受け入れる為に、卒業後セラピーを受け、ようやく立ち直った。そこまでして掴んだ幸せだったものの夫であるアレックスは仕事に忙殺され帰ってこないのだ。彼女が一方的に耐えているとしか思えない。
しかしその状況はソフィアとアレックスの間に次女ジャスミン（16週目）が生まれた途端一変する。
アレックスの両親が熟年離婚してしまったのだ。
長男であるアレックスが結婚し、子供も生まれキャリアも安定したのを見届けた彼の両親は、今まで積もりに積もっていた御互いへの憎しみをぶちまけ離婚してしまった。
そこで彼は、ソフィアに向き合い、どうすれば離婚しなくて済むか、御互いの関係をよりよく出来るか、考えるようになったという。
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『他の家の奥さんもソフィアと同じ様な事を考えているんじゃないか、と思うんだ。僕の仕事が忙しくなると、どんどんすれ違う。御互いの関係に取り返しがつかなくなる前にベストな状態で修復しないと。』
この20年、英国の離婚率は減少しているとはいえ、成婚率は’70年代と同じぐらい低い。
国の調査によると、’13年には11万を超える人々が離婚しているというのだから、成婚率を考えると、離婚は食い止めなければいけないだろう。
離婚に携わるのは家庭裁判所だが、ホール・ブラウン家庭裁判所の弁護士、ジェームス・ブラウンは『カップルはトラブルの解決が出来なくなると、別れを選ぼうとする』と呆れている。
そこまでいかなくても、離婚を食い止めようと夫婦でセラピーに来る人の7割が45歳以下で、両親、学校での問題を抱えている人となると、さらにこの確率は上がるという。
Jane Mcarkey（37）と夫ポール（36)は、妻は流産、ポールはガン、そして離婚という三重苦から立ち直ったカップルだ。
ジェーンは、13の時に両親が離婚。
弟は両親の家を行ったりきたりする姿を目の当たりにし、精神的に不安定になる子供たちを見てきた。
『離婚家庭に育った子供が愛情不足に陥るイメージって判る？金曜の晩に大人が箱いっぱいのチョコやワインを沢山持って、あたしたちを喜ばせに来て、日曜の晩になったら用事があるから帰るわね、っていって別の人の所へ帰っていく。それをあたしたちが行かないでって引き止める。その繰り返し。それはやがてトラウマになるのよ。』
2人は結婚して8年、ミラという5歳の娘に恵まれ、カップルに離婚を踏みとどまらせるボランティアカウンセリングを行っている。
ポーツマスのシェフ、アンドリュー・フォートレイ(32)は、妻アビーと結婚し、1歳になる娘Reyahが居る。
職業柄、金策に困る事もあり、夜も眠れない事もあるが、2人は娘の前で口論しないようにしている。
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『たしかに僕の仕事はとてもストレスが溜まるよ。でも両親と同じ過ちは繰返したくないんだ。』
ドリューの母は父を置いて離婚、再婚し、義理の父はドリューを実の息子の様に可愛がってくれるが、ドリューは、実の父親に勝るものはないと考えている。
それは自分の人生で一番辛い時や、思い出を共有したかった時期に親が居なかったからだ。
『体育会や学園祭に親が来なかったのは僕だけ。父親がいてくれたらなぁ、っていつも思ったよ。』とドリューは語る。
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彼だけが例外ではない。英国ではこの様な例が多く、生まれて来た息子や娘にどう父親として振舞っていいのか、ロールモデルが居ないので戸惑うという事もあるのだそうだ。
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何よりも、夫婦が判れないためには、御互いを受け入れるだけでなく、御互いで、納得し解決するという事も大事なのだろう。
ソフィアとアレックスは、夜寝る前に、御互いの怒りや論争は解決するか、持ち込まない様にしているという。
それでも解決しない場合や、あるとするなら、御互いに
『それでも愛しているよ』
というのだそうだ。
