シングルマザーのコレット・シムズは、やっと
35歳の息子ポールの葬式を出した。
息子の死から9ヵ月、親族や銀行から資金を前借し、
普段の生活を切り詰めての事だった。
葬儀までの間、息子の遺体は安置場に9ヶ月冷凍保存されていた。
彼女の様な例は、現代の英国では珍しい事ではない。
英国の成人男女の6分の1は、身内の葬式すら出せない程、
困窮している。
(C)Getty Images
『自分より先に逝ってしまった息子の葬式を出来ない。
罪の意識を感じない親なんて、居ないと思うわ。』
彼女曰く英国で葬式は悪い意味でビジネス化し、
それが貧困層を圧迫しているというのだ。
事実、英国の葬儀費用の平均は4000ポンド(約506,680円)。
ここ20年来で急激に上昇した背景には、英国の葬儀会社市場が、
Co.Operetive Funeral CareとDignityという
大手二社に8割を占拠された事情がある。
8割を大手が占めるという事は、葬儀会場だけでなく、火葬場も
これらの会社が押さえてしまう事なのだ。
大手会社は、葬儀費用にオプションを付け、
故人を失った哀しみや、支えをなくして途方に暮れる遺族から
金を巻き上げていく。
(C)The Oxford times
そんな彼女に救いの手を差し伸べたのが、独立系葬儀会社社長の
ルーシー・コルバート(写真左)だった。
彼女は、コレット(写真右)が、息子の死に対し、
惨めにならないよう、最低限の費用かつ、
きちんとした葬儀が出来るよう、取り計らった。
元保育士のコレットは還暦になったばかり。
昨年の1月にポールが亡くなり、彼女は
6箇所の葬儀屋に見積もりを取ったが、
葬儀費用は、日本円にして50万~100万と、
彼女が出せる費用ではなかった。
(C)John Lawlence
英国で医師が死亡診断書を書くのには2万強しか要らないという。
英国内で一番葬儀費用が安いと言われるノースウェストの
平均葬儀費用は3257ポンド(約410,382円)だ。
結果、コレットの息子ポールの葬儀費用のトータルは
2300ポンド(289,800円)。
親族や教会主宰のローンで借りたという。
コレットが特別な例ではない。
エセックスに住む共働きイヴ・ワシントンは、30になったばかりの
息子をガンで亡くした。
しかし息子の遺体のお骨が一時戻ってこなかったというのだ。
『息子を火葬場の人質に取られた様だったわ。
お墓をたてる前に、葬儀屋の方が、きちんと探して
持ってきてくださったのだけど、あんな思いはしたくない。』
(C)Getty Images
英国の葬儀事情は、火葬場の値上がりというのが
一番ネックになっていて、
その次は葬儀屋が、下請けを雇っているという事がある。
地元から信頼を置かれている葬儀屋を見つけて葬儀をだせというのは
日本でも同じ事が昔から言われているが、
どうやら英国でも同じらしい。