『ボルヴィの片目はなく、鼻も唇もない。僕も、この子を引き受けた時は正直すぐ死んでしまうんじゃないかと思っていたよ。』そう語るのはレイチェル・リーネマンさん。米テキサス州オースティンにある動物保護施設『Fuzzy Texan Animal Rescue』のディレクターだ。
©facebook.com/FuzzyTexan/lovemeow.com
ボルヴィは、母猫、他の兄弟猫と共にオースティンで’19年4月に保護された。母猫と他の兄弟猫は、感染症の心配もなく健康状態も良かったが、ボルヴィだけが先天性奇形で生まれてきた為、レイチェルさんがディレクターを務める施設に搬送されてきた。
彼の施設はテキサスでは駆け込み寺と言われており、どうしても助かりそうにない保護犬や保護猫に関する連絡が毎日の様に引き取り手を求め入ってくる。が、この施設の職員や獣医でも、ボルヴィの様に数々の先天性奇形が重なり命の危機に晒された仔猫は珍しかった。
©facebook.com/FuzzyTexan/lovemeow.com
ボルヴィは保護された当時、生まれたばかりで体重はわずか19gしかなく、猫だというのにリスぐらいの大きさしかなかった。母猫が多産だったのか、もしくは妊娠中に感染症にかかったかどちらかが原因でボルヴィは、障害を背負って生まれてくる事になった。
右目がなく、左目も殆ど見えない。鼻はなく、口呼吸だが、上唇の形がない。唇が裂ける口唇裂と口腔内が裂ける口蓋裂なので食道と気道の境目があいまいなまま、ボルヴィは産まれてきた。
『Fuzzy Texan Animal Rescue』では、口唇裂や口蓋裂の猫や犬を度々保護しており、こうした犬や猫をみかけた場合、シェルターに連絡して欲しいとFBに告知している。
『無論、保護する我々も、口唇裂や口蓋裂を持つ子猫や子犬は正しい知識を持って保護しなくては死んでしまうことは判っていますし、獣医も何人もついています。だからこそ駆け込み寺と言われているのです。』レイチェルさんは語る。
©facebook.com/FuzzyTexan/lovemeow.com
ボルヴィは、自分で哺乳瓶からミルクや栄養ドリンクを飲むことが出来ないので、レイチェルさんは点滴用の細長い管で、栄養剤を毎時間、少しづつ与え続けた。保護して最初の24時間は全く気が抜けなかったという。『自分に言い聞かせ続けたよ。この24時間を乗り切れば、この子は生き延びる事が出来るんだ、この24時間が勝負だってね。』
幸いだったのは、ボルヴィがチューブで栄養を与えても嫌がらなかったことだった。『こんなに小さいのに生きるのに必死なんだ。よく泣いて、動き回って、一日一日信じられないスピードで回復していったよ。』ちょっと栄養チューブのご飯が遅れただけで、『ご飯まだ』とおねだりするぐらい、ボルヴィは、すぐにお腹を空かせた。それぐらい成長スピードがはやかった。
レイチェルさんや他の職員の心配をよそに、ボルヴィは日に日に成長。その様子や体格や体重にも現れていった。僅か1週間で19gから63gに体重が増えたというのだ。心音も保護された当時は、聴診器越しに、ほとんど聞こえなかったというのに、今でははっきり、クリアに聞こえるというのだから、すごいものである。
ここまでは、『Fuzzy Texan Animal Rescue』の職員の応急処置とボルヴィの生命力のおかげだが、残された課題は、ボルヴィがこれから生きる為に必要な手術を、いつ、どの順番でするかだ。いずれにしても大手術が必要になる上、やっと回復に向かったボルヴィが手術を受けた後に術後の容体が悪化して死んでしまってはどうにもならない。
©facebook.com/FuzzyTexan/lovemeow.com
獣医たちが検討しているのは、ボルヴィの鼻腔の確保だ。ボルヴィには鼻がない。現在はわずかに空いた口の隙間と食道と気道のつなぎ目から息をしている。
『私たちは鼻呼吸で息をするのが当たり前だが、ボルヴィはそうじゃない。ある日突然出来た鼻で息をさせるトレーニングもさせなければいけないし、気道と食道をわける手術や、唇を作る手術もした方がいいだろう。それにボルヴィが耐えられるかどうかも課題になってくるんだ。』施設に所属する獣医たちは語る。
手術は形成外科医が行うが、幼いうちから行わなければ死んでしまう危険性は高くなる。『口蓋裂の子供たちはチューブで栄養を与えなければ死んでしまう。多くの飼い主はそれに気づかず、ペットボトルで水をあげて死なせたりするんだ。』レイチェルは不慮の事故でこうした先天性異常を持った子犬や子猫たちが死んでいくのを残念に思うと答えていた。
©facebook.com/FuzzyTexan/lovemeow.com
’19年4月現在、ボルヴィは生後2週間。保護された『Fuzzy Texan Animal Rescue』から独立してFBが作られた。保護されて2週間たち、自分の足で、よちよちながら歩けるようになったので、お披露目になった様子をFBで見る事が出来る。
体つきはしっかりしてきたが、四肢は細いままなのは、動画を見る限り、やっと歩ける様になったからなのだろう。
ボルヴィが生き延びる為には、いつか大手術は避けられない運命だ。ここまで生き延びてきたのだから、これからの試練も乗り越えてくれる事を祈りたい。
Kitten Who Was Born Very Special, Gets Help Just in Time and is Determined to Live and Thrive