世界最古の動物保護NGO・RSPCA(英国動物虐待防止協会)の信用が崩れかかっている。


今年11月、子犬、子猫のブリーダー登録制度が改訂になる『Lucy’s Law』が正式に国会に提出になり認められるのを前にして、肝心の動物保護団体の信用がなくなっている事に英国民だけでなく世界中から疑問の念が寄せられている。


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問題となっているのは、保護した動物と新しく飼い主を見つけられた数のギャップだ。

RSPCAは、’09年に11万頭の動物を保護し、7万頭以上もの動物に対し新しい飼い主を見つけた事で、その功績が世界中に評価されていた。だが『保護された動物に新しい飼い主をみつける数』は、’09年が頭打ちとなり、それから10年近く、減っていき、現在では保護された動物の3頭に1匹は殺処分、もしくは安楽死となっている事が発覚したのだ。

日本の様に、保健所の存在が暗黙の了解で認められている国とは違い、英国ではNGOの動物の安楽死、殺処分が飼い主の許可なしで行われている事は、信用問題につながる。

Dailymailの調査によると、昨年RSPCAが保護した動物は、11万5千頭。その内、新しい飼い主が見つかったのは、4万4611頭と3分の1だった。
それだけでなく、新しい飼い主を見つけた後のケアもされていない事がメディア上で発覚。


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英ケント州ラークフィールドに住むサンドラさんは、三毛猫のトムを9年間、近所の家から譲り受け家族の一員として大切に育てていた。

’16年8月1日の金曜日、トムは行方不明になり、夫のジェームスさんと四方八方を探した後、RSPCAを頼る事に。RSPCAは、譲り受けた猫であれば首に登録時のマイクロチップが埋め込まれているはずなので、見つかった時に連絡できると引き受けてくれたので、サンドラさんは安心して任せていた。

だがサンドラさんの元に届いた知らせは、予想外のものだった。翌週の火曜日、トムは見つかったが、あまりにも衰弱していたため、安楽死させたというのだ。

『NGOの勝手な判断で安楽死させるなんて、どんなに弱っていてもいいから最後に一目会いたかったわ。その知らせがメール一通で来ただけなのよ、信じられる?電話をいれてやっと、(猫の)遺体を保管していますので、引き取りますかって言ってきたのよ。これがNGOのやることかしら?』
サンドラさんは取り乱しながらdailymailの取材に答えた。

RSPCAは、たとえ近所から譲りうけた猫であったとしても譲り受けた時に、猫に埋め込まれているマイクロチップの情報は飼い主同士で更新してほしいと主張。代理人は『我々も連絡や捜査が遅れたのは、マイクロチップの情報が前の飼い主の情報のままだったからだった。今回は不運としか言いようがない。』と冷たい対応だ。

スコットランドでは、猫や犬の行方不明を防ぐために、マイクロチップを埋め込む事が義務付けられているが、サンドラさんの様なケースも起こりうる。その時に動物愛護団体は助けてくれないと飼い主たちに悪い印象を植え付ける結果になってしまった。

RSPCAの方針に疑問を抱き、SHG(Self Help Group)を立ち上げたアン・カシカはdailymailの取材に対し、こう答えている。

『保護される動物の数と、新しい飼い主が見つかる数に、これだけギャップが出てきた事は、深刻な問題だわ。元々の飼い主のモラルが問われるのは勿論だし、新しい飼い主が見つからない動物の現状は政治家や他の国々の人々にも知ってもらうべきよ。動物を飼う事の責任を果たす事がどういう事か知る事が大事でしょう?』

アンの主張に対し、RSPCAの代理人は、この様に反論。

『我々の元には、管轄医療センターで専門医療を施しても、完治する見込みのない病を持った動物や、高齢になった猫や犬、一時期飼う事がブームになった家畜が持ち込まれるようになった。これが保護した動物に新しい飼い主が見つからない主な原因だ。飼い主たちの多くは無責任で、利益目的で愛玩犬を量産する悪徳ブリーダーから、最初から飼えない事が薄々判っているのに飼った人も居る。
それなのに、彼らはこういうんだ。もう自分では飼う事が出来なくなった、安楽死させてくれってね。』

確かに、RSPCAの元には、動物園で保護した方が良いのではないだろうかという様な動物が保護されてくる。管轄の保護施設が複数ある事に付け込んでクレームを言ってくる国民が居る事も確かだろう。


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RSPCAでは、5年前、白いアラブ馬12頭を闇ブリーダーから保護した。アラブ馬は、馬の中で最も古く、ベドウィン人が家畜化して広まった。

耐久性も良い為、古くは軍馬、現在では競馬のサラブレッドの原型として知られている。希少価値から、サラブレットの種馬として利用するブリーダーも多い。その一方で好奇心が強いので、馬の扱いになれた飼い主でないと飼いならせないのも事実だ。

日本では現天皇がオマーンを訪問した際に、記念に『アハージジュ』という雌馬が送られてきたが、日本の馬とは馴染まないため、別の舎で育てていたという。

それほど珍しい馬であるため、保護した時は、その行く末は他の保護団体から注目されていたが、保護された時、衰弱したものや、暴れて手が付けられなくなっていたものが多かったため、RSPCAは全ての馬を射殺した事が発覚。猛抗議を喰らった。


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日本では見かけないと思うが、英国領の国では、白黒シマの豚『クネクネピッグ』をペットにする所がある。

マオリ族が飼っている豚の一種で、19世紀半ば、捕鯨船に乗せられ、英国領各国に伝来した。NZ、オースラリア、英国でみかける豚で、小さい時はウェルギッシュコーギーぐらいの大きさで毛並みもふさふさ。大人しく従順で、豚だが清潔好きなので、手軽にペットにしてしまう人がいると言う。

クネクネという名前はマオリ語で『太っちょ』という意味で、コロコロしている姿が、愛らしいと注目を浴びたが、大きくなると、豚は豚、手に負えない大きさになってしまう上、餌代もかかるので、こちらも手放す人が出てきた。

それでも根気よく育てているオーナーは中には居た。

ドーセットに住むボブ・スキナー(63歳)は、20年間クネクネピッグを育てていたが、様子がおかしくなり獣医に診てもらった所、余命僅かと言われてしまった。

クネクネピッグは、’80年代に絶滅危惧種に認定されており、安楽死させる場合には、飼い主の許可が必要になっていた。ボブは薬による安楽死よりも、飼っていた豚の自然死を望んだ。

ボブはRSPCAに相談し、最期を広々とした牧場に放牧させてやってくれと頼んだが、RSPCAはクネクネピッグが末期ガンである事を理由に、依頼を受けて数日後、薬で安楽死させた。

RSPCAによると、飼い主の要望で困るのは、ボブの様に『自然に返してくれ』というものだ。
日本でも『ラスカルブーム』が起きた後、野生のアライグマが民家を荒らしてとんでもない事になった。これはラスカルの最終回は主人公がラスカルを森に返してしまうハッピーエンドだったからだ。

RSPCAが、保護した動物を安楽死させるには理由がある。
保護させた動物で飼い主から『野生に返してほしい』という依頼があった6256匹にマイクロチップを埋めてトラッキング調査を行ったのだ。こうした調査と結果をまとめるのはRSPCAのお家芸とも言える、その結果4835匹は野生に返した一か月以内に死んでしまった事が発覚。

それなら安楽死させた方がよいのではないかというのが、トップの判断だった。
その判断が世間の目には冷酷に映ったのは確かだ。

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さらに信用をなくしたのが、RSPCAのCEOの問題だ。
今年5月、CEOのマイケル・ワードが寄付金のうち15万ポンドを着服していた事が、第三者消費者委員会の調査で発覚。

RSPCAは寄付金だけで成り立ち、宝くじの収益金などをあてにしない純粋なNGOなだけに信用がガタおちとなった。

新会長は『失った信用は取り戻すしかない。我々の動物保護方針については昔からゆるぎないものだ。』としているか、どうなるか、行く末を見守りたい。

RSPCA ‘rehomed just one in three rescue animals’ and killed 30% as critics warn the charity is ‘too quick to euthanise’

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