ガーデニングブームに沸く日本だが、見た目が美しくても猛毒を持つ草花や樹木に関しては無知だと言える。
キキョウ科のイソトマは、風にそよぐ姿が美しく手間もかからないので、時々、小学校の通学路に植えてあるのをみかけるが、あれは危険だと思う。
イソトマにはアルカロイド系の毒があり、樹液が触れるとかぶれる事もあるばかりか、最悪の場合失明する事もあるからだ。多くのガーデナーは、こうした知識を知らないでいる。
諸外国は、ガーデニングに関しては日本よりも進んでいるが、それ以上に外来種の浸食や毒性に関しても、いち早く規制をかけているのが現状だ。
そのうちの一つが、ジャイアント・ホグワードと呼ばれる木である。
米バージニア州フレデリックスバーグに住む少年・アレックス・チャイルドネスは、夏休みのバイトで、ガーデナーをやっていた。
彼は、バイトの最中に知らずに、ジャイアント・ホグウィードに知らずに素手で触ってしまったのだ。作業を続けていた彼の顔や腕にみるみるうちに水膨れが出来てきてきた。
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アレックスは慌てて父・ジャスティンにメールを送り、すぐに家に帰り、シャワーを浴びると、瞬く間に顔と腕の皮膚の皮一枚が剥がれ落ちた。
看護婦の母に応急処置をして貰い、アレックスはヴァージニア大のメディカルセンターに救急搬送される事に。
『背の高い木に登って、木の枝を切ったんだ。そして枝が顔と腕をかすめたと思ったら、みるみるうちに水膨れが出来た。まさか自分がこんな怖い木で作業していると思わなかった。』アレックスが語る。
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アレックスによると、1時間冷水シャワーを浴び続け、体のPHが中性になった所で、応急処置を施され病院に搬送されたという。
搬送された病院では、体を消毒され、光毒性の樹液を浴びたので、しばらく紫外線を浴びない様にと注意されたらしい。
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アレックスの体に火傷を引き起こしたジャイアント・ホグウィードは、どんな植物なのか。
ジャイアント・ホグウィードは、和名だとバイカルハナウド。ブタクサの一種の多年生植物。原産地はカフカース地方や中央アジアなどコーカサス山脈だと言われている。
シャク(ヤマニンジン)と似ているが、違うのはジャイアント・ホグウィードには、幹に白い毛が生えている事と斑点がある事だ。
輸出が始まったのは、19世紀の英国で、当初の目的は観賞植物だったが、その後、欧州各国やアメリカ合衆国やカナダへと広がっていった。
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米国には、1917年頃にNYに観賞用として持ち込まれた、1930年代にはブリティッシュコロンビア州で生息している記録が残っている。
成長すると2、2.5mの高さになり、繁殖性も高いので、在来種の繁殖を妨げる危険性が高い。
大きくなると10万個以上の種子をつけ、拡散させるので、カナダと米国で特定外来種として扱われている。
ジャイアント・ホグウィードが駆除対象になる理由は、繁殖性だけでなく毒性だ。
樹液は、フラノクマリン類の有機化合物毒を含んでおり、植物性光線皮膚炎の原因となり、水疱や長期間痕の残る傷、眼に入った場合は失明する危険性がある。
フラノクマリン類の有機化合物は、細胞を死滅させる作用があり、これらの危険性を踏まえ、ジャイアント・ホグウィードに触れたり掘り返す際は、防護服とゴーグルを着用する事が義務つけられているぐらいだ。
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こうした事から、ジャイアント・ホグウィードは多くの国で駆除対象になっていて、英国では1981年から植林、繁殖は違法。
米国では1974年に連邦政府により有害植物に認定され、州間の移動および輸入も厳禁となった。
アレックスは、治療費を
チャリティで賄う方針だ。
『夏にガーデナーをしてお金を貯めて地元の電気専門学校卒業後、軍隊に行くつもりだった。それが出来なくなったんだ。紫外線を浴びると命に係わると言われたからね。』
ジャイアント・ホグウィードに触った事で引き起こされる水膨れは、最悪なものでは半年以上もひかないものがある。
しかも治療には、治療には、強力な局所ステロイド、それでも効果がないのであれば経口プレドニゾロンを使用するので、体そのものも免疫力を奪う。ステロイドの恐ろしさを知っている米国が真っ先に輸入禁止に乗り出した理由も判る。
連邦政府では、今回の一件を受け、改めて『一見紛らわしいと思う植物があれば、政府に一報願いたい。有害植物は繁殖を防ぐべきだし、政府の物が伐採に伺う方針だ。』と言っている。
欧州や米国が草々に輸出禁止にしたお蔭もあり、日本では輸入されていないジャイアント・ホグウィード。
たまに日本のガーデナーや園芸家が、都心部の緑化に招聘されて珍しい木を『シンボルツリー』として持ち来む事がある。もしもそれが毒のある木だとすればどうなるだろうか。
物珍しいというだけで、そうした木を持ち込むのはやめにして、既存の日本の品種をめでるのもいいのではないかと思う。
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