米テキサス州・オースティンに住むモンタナ・ケリーちゃん(7歳)が、先月16日、キリマンジャロ登頂に成功していた事が判った。
©Hollie Kenny
キリマンジャロ登頂記録では、女性では最年少。
最年少登頂は’08年にLA在住のキャッシュ・キャラハン君が両親と登頂に成功した7歳が最年少となる。だがモンタナちゃんがキリマンジャロ登頂に成功した事は偶然ではなかった。父親の死がなければ、登る事もなかったかもしれなかった。
モンタナちゃんは、オースティンのリバーリッジ小学校の2年生。スポーツ万能の両親の元にテキサス州に生まれたものの、彼女が三歳の誕生日を迎える前に父親は他界。最愛の父親は帰らぬ人になってしまった。
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母親のホリーさん(45)は、学生時代から、バスケットボール、マラソン、トライアスロン、水泳など、ありとあらゆるスポーツをこなすスポーツ万能選手で、夫亡きあとはスイミングスクールを経営する傍ら、スポーツサークルのボランティアも務める多忙な日々を送っていた。
モンタナさんのキリマンジャロ行も当初は、ホリーさんが昔のトライアスロン仲間を誘い、学生時代の時と同じ体力があるかどうか力試しに登ろうと声をかけていた所だった。
アフリカ・タンザニアにあるキリマンジャロ山は、コーヒーベルトとして有名なだけでなく、年間2万5000人の人が登山に訪れるものの、3分の2の登山者しか登頂にたどり着けないと言われている標高2万メートル近くの山だ。
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そこにモンタナちゃんが突然『私も行く』と言い出したものだから、ホリーさんは仰天した。
『まさか娘が行くというなんて思いもしなかったのよ。娘が行くと言ったら確実に登れるルートや日程を考えなきゃいけない。ヒヤヒヤしたわ。』ホリーさんは当時を振り返りこう語る。
モンタナちゃんはキリマンジャロに行きたいと言った理由はただ1つ『(今いる場所より)もっと高い所に行きたい。そうすれば天国のパパに近づけるかもしれないじゃない。』
まだ父親の死を受け入れていない娘、一度言い出すと何も聞かない娘の希望を潰すわけにもいかない。そう考えたホリーさんは、確実にキリマンジャロにたどり着けるコース、日程と同時に検索したのが、今までモンタナちゃんと同じぐらいの年で登頂に成功した事がある子供がいるかどうかだ。
公式ページを見ると、キリマンジャロは10歳以下の子供の登山は認められないとあるが、登山経験のある親同伴に限り認められている事を確認。
その上、公式記録を見た所、’08年にキャッシュ・キャラハンという7歳の男の子が両親と共に登頂成功している例と、ロキシー・ゲッターというフロリダの女の子が同じく両親と共に8歳で登頂成功している例を発見。ホリーは逆に燃えてきた。
『もしかしたら今モンタナが登頂成功すれば史上最年少になるかもしれない…。』ホリーさんは、モンタナちゃんの春休みを待って、三月の一週間でキリマンジャロに登る事を決意。
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そう三月と言えば、春山である。誰もが春の訪れを告げる雪山は登山を避ける。雪崩のリスクがあり、遭難と凍死の危険性が高くベテランの登山家でも命を落とす事があるからだ。吹きすさぶ氷の様な風と断崖絶壁は、モンタナちゃんが育ったテキサスとは全く違う。だがホリーさんとモンタナちゃんは、いちかばちかに賭けた。
ホリーさんとモンタナちゃんは、4~8時間かけて登っては休みを繰り返し、ゆっくりとした登山ペースでキリマンジャロを登っていった。モンタナちゃんは『ママが一緒にいたから大丈夫だった。毎日が違う風景で、とても面白かった。』と語っていた。大人ならこうはいかないだろう。
キリマンジャロ登頂にたどり着いた時、空は生憎曇っていた。
だが、その曇り空をモンタナちゃんは、天国のイメージに結び付け、ホリーさんにこう語りかけたという『ママ、もしあの雲の向こうからパパが見えたとしたらどうする?』
ホリーさんは『娘は、本当にあの時、雲の向こうに父親を探していたんだろうと思うんです。それが登頂の本当の目的だった。他の子供と違うんですよ…。』そうしみじみ語った。
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ホリーさんは、モンタナちゃんに、キリマンジャロに登る時はつらくなかった?と聞いた所『楽しかった、簡単だった』と笑って答えたので、面食らってしまったという。
娘がやりたい、挑戦したいと思う事に対して何も思い煩う事はないのだと、それだけでなく親が子供から教えられる事は山ほどあると、ホリーさんは、この登山で改めて知ったという。
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天国のパパに逢いたい…娘のたった一つの思いから始まったキリマンジャロ登山は、思わぬ新記録を生み出した。
若くして亡くなったモンタナちゃんの天国の御父さんの導きがあったからに違いない。