カゼ薬や頭痛薬の成分としてお馴染みのイブプロフェン。飲み続けると男性不妊の原因となる事が仏・デンマークの合同研究で明らかになった。
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研究結果を明らかにしたのは、デンマーク・コペンハーゲン大の臨床研究チーム。
大学の臨床研究チームは、18歳~35歳までの男性31人を被験対象にし、その内14人には、2日置きにイブプロフェン600mg(1錠200mg毎食3ごと)を服用して貰い、残りの被験者にはプラセボを服用して貰い、6週間経過を見るというものだった。
イブプロフェンを服用した被験者は、服用2週間で、黄体形成ホルモンが血中のイブプロフェンと同調。その結果、黄体形成ホルモンに対するテストステロン(男性ホルモン)が減少した。
黄体形成ホルモンは、下垂体から分泌され睾丸を刺激し、男性ホルモンを作る。この働きが乱れると、生殖障害だけでなく、鬱、心血管障害などのリスクにも繋がる事が判明した。
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イブプロフェンの1日の服用限度は600mgになっている。市販されているイブプロフェンを有効成分として含む風邪薬は、エスタックイブ、パブロンエース、コンタックEX、ベンザブロックと聞いた事がある代物ばかりで、これからの季節お世話になりそうなものばかり。
頭痛薬も、ナロンエース、イブクイック、ノーシンピュア、セデス、バファリンプレミアム、リンクルアイビーなど、『バファリンやロキソニンでは胃が荒れるから、これにしよう』と選ぶ人が多い代物だ。ただし頭痛薬の中に含まれるイブプロフェンは200~400mgになっている。
風邪薬の服用期間は平均10日になっているので、風邪の時に服用する分には構わないが、頭痛もちでこれらの薬が手放せない人となれば、どういう影響が体に出るかは判るはずだ。
そもそもこの研究チーム、何故、イブプロフェンの害を突き止める事が出来たのか。
元々この研究チームは、世界各国で市販の鎮痛剤として使用されているアスピリン(バファリン)、パラセタモール、イブプロフェンが、妊婦と胎児にどの様な影響を与えるのは調べていた。
結果、胎児が男の子の場合、生殖機能に影響を及ぼす事が判明。同じ事が成人男性でも起こるのではないかと被験者を切り替える事にした。臨床研究を行う際に、妊婦を対象に行った臨床で、一番結果が明確に出たイブプロフェンで行ったという事である。
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では、他の非ステロイド性抗炎症(NSAIDs)でも、同じ様な結果が出るのだろうか。実は生殖障害よりも深刻な心臓や脳の毛血管に繋がる障害が出ている事が研究結果で明らかとなった。
カナダ・モントリオール大は、市内で45万人の非ステロイド性抗炎症(NSAIDs)を常用している患者をリサーチした結果、ジクロフェナク(ボルダレン)、セレコキシブ(セレコックス)、ナプロキセン(ナイキサン)、ロフェコキシブ(バイオックス)の4点は、心血管及び脳血管に重大な影響を及ぼす事が判っている。
ナプロキセンは痛風発作やヘルペス、関節痛に処方されるが、効果が限定される為、第一選択薬というわけでもない。ボルダレンも座薬として使われる事が多い。
COX-2阻害薬系のNSAIDs、セレコキシブは、ロキソニンに比べ胃に負担がかからないという点で、選択される事があるが、心臓や肝臓に疾患がある患者には処方されない。同じコキシブ系のNSAIDsでメーカーの自主回収となったロフェコキシブをみれば明らかだ。
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ロフェコキシブは、今までの鎮痛剤が胃壁を荒らし、常用することで出血する副作用があった点を改良した事から、抗リウマチ剤として処方されていたが、服用者が相次いで心臓発作、脳梗塞、脳卒中で死亡。
薬害を判りつつ隠蔽し続けた発売元のメルクは25億ドル(3000億円)の売上のあった薬を市場から引き上げる事となった。これにより、薬害を隠蔽していると思しき薬を市場に出すまいという法案・FDA再生法が’07年に成立した事が明らかだ。
米国ミズーリ大の研究によれば、殆どの医薬品は生殖機能に及ぼす影響を調べていないという。元々生殖機能が低い男性が鎮痛剤を常用し続けていた場合、鬱や、更年期障害、果ては人間関係にも影響が出てくる。良き医者が殆ど薬を出さないのは、これらの薬害が判っているからだ。
英国大衆製薬工業協会(PAGB)会長・ジョン・スミスによると、イブプロフェンは短期間・限定目的で服用する分には何の問題もないという。
普段健康な人が、風邪の熱を下げる、喉の痛みを抑えるという目的で、10日だけ服用するというのであれば、心臓や脳、はたまた、腎臓、肝臓など、これらの薬の代謝地点で負担をかける事はない。イブプロフェンをはじめこれらのNSAIDsは、ウィルスや疲労による体の炎症を抑えて、後は体の免疫力で回復するのが目的で作られた薬だからだ。
だがこれらのNSAIDsは、常用することで、人間が本来持っている機能を衰えさせる事もあるという。イブプロフェンが男性ホルモンを作るのを怠けさせてると同時に、湿布に使われるインドメタシンも長期間貼り続ける事で逆に筋肉が怠け、違う痛みが出てくる。
成人男性は、この40年の間に精子が半分に減ったというデータがある。その為、結婚して子供が出来ない場合、妻を責めるのがお門違いという世の中も当たり前になるだろう。
それでもあなたは頭痛薬をドラッグストアに買いに行くだろうか。