ネトフリの製作自由度が、ハリウッド俳優のみならず、お笑いの吉本にもウケているらしい。
だがそんな恩恵を受けられるのは『後ろ盾の組織がある人』だけだと、声を大にして言うのが、女優でコメディアンであるモニークだ。
モニークは映画『プレシャス』で主人公の屈折した母親を演じ切り、アカデミー助演女優賞を受賞した黒人女優。
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その輝かしい業績とは裏腹に彼女は、ネトフリなど新たな媒体が台頭する世の中になっても、ギャラの格差に悩み、怒り心頭のあまり、出演オファーを蹴ってボイコットした。有名女優がネトフリのオファーを蹴るのはこれが初めてだ。
『視聴者はネトフリをハリウッドスターたちの劇場未公開作品が観れる場所と思っている様ね。』モニークはこう前置きして、Dailymailのインタビューに答えた。
ネトフリで自由に作品を作れる権限が与えられているのは、大きな芸能事務所がバックグラウンドにある人間や、既に名前が売れている俳優、格闘家などの有名人に限るという。
しかも男性、白人、そして先進国が優位なのは、昔からテレビ業界では変わらないという。
ハリウッド俳優がケーブルテレビに活動の場を移すのは、日本の俳優やお笑い芸人たちが、日本のキー局で仕事をすると、儲けがキー局に行ってしまい、現場の下請けで仕事をしている人間が育たなくなるからという理由と同じだ。
だが、ネトフリでは、その恩恵にすら、あやかれない人間がいるという、それがモニークら、黒人女優たちだ。彼女だけではない、昔のようにドサ周りでスタンダップコメディアンが稼げなくなった今、コメディアンは危機に瀕しているといっても過言ではないという。
彼女はネトフリは、利用の仕方によっては、かつてのSNSの様に、アダム・サンドラーやベン・スティラーを発掘し、逆に映画業界に送り込む事も出来たのではないかと思っていた。それが彼らが有名になった途端ネトフリに逆戻りし、自分たちが作りたいと思っていたシリアス路線のドラマを作っている所にも、モニークは怒りを隠せない。
『やれやれだわ。あいつら、有名になったら、これぞ自分たちの作りたいものだったと言わんがばかりに、シリアスモノをネトフリで配信してる。私たちの活躍の場を奪ってまでね。』
モニーク自身も『Almost Chirstmas』という映画に出演しているが、劇場未公開となってしまった。
これは母親がなくなって初めての感謝祭にあつまる黒人一家を描いた話で、モニーク以外に有名な俳優は、父親役のダニー・クローバーのみ。知名度もない為お蔵入りとなった。
『出演俳優が黒人だ、今イチだ』という理由でレッテルを張られ、世界に配給されない。白人映画であれば、最近公開されたニコラス・ケイジ主演の『オレの名前はヴィン・ラディン』の様なバカ映画でも日本で劇場公開されるというのにだ。この落差がモニークにとって許しがたいものなのだ。
『ネトフリは、判りやすいビックネームを局に呼びたがるし、彼、彼女らに大枚はたくのが好きなようね。黒人でもデンゼル・ワシントンみたいなビックネームでなきゃ、みんな映画は見ようともしない。』
『チャドウィグ・ボーズマンはラッキーだった。彼は歴史のパイオニアになった黒人の役を演じる事で自分の地位を築いたも同然だわ。ジャッキー・ロビンソン、ジェームス・ブラウン、今度はブラックパンサーでしょ?ここまでやらないと黒人は中身を評価して貰えないのよ。誰もがエディー・マーフィーみたいなお笑いだと思わないでほしいわ。』
彼女のいう事は的を得ている。
未だに黒人は、余程のインパクトのある役か、歴史上の人物を演じない限り、注目もされなければ評価もされないのが事実だ。これではメディアで平等とはいえない。
ボンドガールの座をいとめたグレーシー・ジョーンズや、ハル・ベリーも同じ事を言及している。
何よりモニークが腹を立てているのが、メディアに向かってつまらないごだくを並べているだけでギャラを貰える白ポチャコメディアン・エイミー・シューマーに破格のギャラが支払われているという事実だろう。
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ネトフリはシューマーに13ミリオン(14億円)のギャラを支払ったというのに、モニークには50万ドル(5100万円)しか支払っていない事が発覚。モニーク曰く
『どうしてあのバカ女に、そんな大金が支払われるのよ!ネトフリは彼女はドル箱コメディアンだというけれど、視聴者がバカになったとしか言いようがないわ!ネトフリは白人ばかり見てるわけ?はぁっ?』モニークの怒りはおさまらない。
『オスカーの司会もやったクリス・ロックでさえ20ミリオンなのよ。彼らは映画の製作や脚本にも携わるというそれなりの仕事をしているから、それなりのギャラを貰えるのよ!あんなバカ女に金やってどうするのよ!本来なら13ミリオンというお金はオプラ(ウィンフリー)が貰うギャラでしょう?』
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モニークは昨年末も、ネトフリ相手に、オプラ・ウィンフリー、タイラ・ペリーらのギャラが低すぎると猛抗議。
業界では、モニークは言い杉だという声もあるが、ホワイト・ウォッシングされている業界というのは拒めない。
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つい最近もHBOの看板ドラマ『HAWAI-FIVE0』で、主力キャストの、コノ・カナカウア役グレース・パークと、チン・ホー・ケリー役の、ダニエル・デイ・キムが、ダノ役のスコット・カーンと同等のギャラを要求した所却下され、第7シーズンで降板した。
モニークだけでなく、アジア系アメリカ人も例外ではない差別を受けているのは確かであり、ドラマの中でのホワイトウォッシングが、はびこっているのが事実だ。
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日本では、吉本が地上波でドラマを作ろうとすると制限があるから、技術も学べて、制作も融通が利くネトフリに変えようとしている話がある。
だが、モニークに言わせれば、甘い考えだという事は間違いないだろう。