米フロリダ・タンパの学生・サフロン(18)のクローゼットは、ハリウッドスターかスーパーモデルの様だ。サフロンと同い年でフロリダに住む普通の女の子は、H&Mで買い物をしている。
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プラダやバーバリのドレスが所狭しとかけられ、バックも山積み状態。グッチ、エルメス、ルイ・ヴィトンのアクセサリーや靴もこの通り。彼女が望めば1月ごとに二人の億万長者のパパが何でも買ってくれた結果がこれだ。二人のパパ、そう彼女はゲイカップルの娘なのである。
サフロンと兄のアスペンの父親は、一代でメディカルリサーチ会社の社長となったバリー。
バリーは精子提供し、双子の兄妹をもうけた。サフロンとアスペンの遺伝子上の母親はトレーシー・マクレイン。だが2人は遺伝子上の母親に逢った事はない。
ブルネットのトニーは、バリーが会社を起こした時からのビジネスパートナーだが、彼もまた同じ様に精子提供し、息子が居た。長男オランド(13)を筆頭に、双子の息子、ジャスパーとダラス(6)である。
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バリーとトニーは、共に仕事をし、お互いの家を行き来するうちに、お互いがゲイである事に気付いただけでなく、家族が必要だと感じ、互いの子供の為に籍を入れる事にした。
二人の家はフロリダのタンパにあるが、別邸は英エセックス州にある。英国では公に認められたゲイカップルは居るが籍を入れるとなると話は別らしい。彼らは英国初の籍を入れたカミングアウトした経営者となった。
長女サフロンの私生活を公開したのは、トニーのアイデアだった。トニーは『私たちの家族は息子ばかりで、周りから変な目で見られてはと思ってね。娘の事を公開する事にしたのさ。』というが、これが油雑巾に火となり、サフロンは『お騒がせセレブ』と言われる羽目に。
トニーやバリーはサフロンにだけ甘いのではない。サフロンとアスペンが18になった時、2人の誕生日プレゼントにランドローバーをプレゼントしている。アスペンには黒、サフロンには白だ。アスペンは判るがサフロンは、こんな大きい車が必要なのだろうか。
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日本でもバブル絶頂期に、新卒の娘や息子に『ワイルドスピード』に出てくるようなスポーツカーを買い与えたバカ親が居た。
一か月後に自損事故を起こすにも関わらずだ。それと似ている溺愛ぶりだ。普通の外国人は免許を取ったら、親から中古を譲って貰うか、自腹で買えるオンボロ車で車の運転を学ぶ。バリーとトニーの子育ての間違いっぷりは、この辺りにも現れている。
サフロンのワードロープだけでも、年間200万を超えていて、金額にしてベンチャー企業の開業資金になっている。それだけではない。
彼女はトニーとバリーの結婚の時に、家一軒建つ程の指輪をプレゼントされただけでなく、毎月£5000(75万)のお小遣いを貰っているのだ。
広大な敷地の家に住んでいるので家賃は要らない。欲しいブランドものは全部親に買ってもらい、学費も食費も親が払う。それとは別に75万がどこに消えるのだという訳だ。
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『私は他の人に比べてとてつもなくラッキーだし、二人のパパは非の打ちどころがないわ。パパ(バリー)は、お小遣いを貰うのが当たり前と思わないでと、何度も言って来たけど、あまり自覚がななかったのよ。』と爆弾発言をするのが長女サフロン。
億万長者の娘でも、代々富豪であったり、じいやばあやが厳しければ、こうはならなかっただろう。だが、バリーとトニーは一代で財を成した。言葉悪くいえば成金でもあり、財にふさわしい『人格』となるロールモデルが居ないのが、不幸だったのだろう。
バリーとトニーは、この仕事を起こすまでに、様々な職業を体験した。成功の積み上げが今の彼らを作っていると言っても過言ではない。
特にサフロンとアスペンの父・バリーが大切にしているのが、マクドナルドでのバイトだ。バリーは最初の事業を起こす時、開業資金をマクドナルドのバイトで貯めた。
『僕らは子供を持てた事を誇りに思っている。でも、その思いが形となり、実現するのは、自分の子供が世の中の人々に受け入れられるようになってからなんだ。社会的に認められる業績を残し、慈善事業をし、喜ばれる事をして、はじめて僕たちの夢がかなう事になる。』バリーはこう語っている。
サフロンも、このままタブロイド紙の笑いものになっているわけではない。
彼女は高校卒業前に、自分のコスメ会社『Barking Mad Cosnetic』を設立。
コスメマニアの彼女が監修してオンラインで発売した乳液やナイトクリームは飛ぶように売れている。一月にブランドモノのコスメに2~3万は使っているというだけあり、自社コスメの開発にはかなりうるさかったようだ。
自分専用のタンニングマシンを置き、ブロンズの肌をキープするサフロンは『そろそろ働いて自立すべきよね?好きな事でお金を稼げるなんてすばらしいじゃない?』とサラっというが、これにうな垂れているのが実の父親のバリーだ。
どうやら彼女の『自立』はバリーが思う形ではなかったらしい。
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サフロンのコスメ会社の開業資金は、パパであるバリーが全額出資。スタッフも父親のつてで探してきた。サフロンは出世払いで返すというが、それはいつの事か判らない。
『僕としては、サフロンにまず、誰かに雇われる仕事について欲しかった。それで社会のルールも学べるし、世の中に色んな人が居て、社会勉強も出来る。自分がいかに身の程知らずで世間知らずかもわかると思うんだよ。それで僕が叱られてもいいと思ってた。親はそれを恐れて子供のやる事に先々手を差し伸べてしまうだろうけど。それは間違ってると思う。僕がマクドナルドのバイトから始めた様に、娘も底辺の仕事から始めるべきだった。開業資金を出してるなんて本当にバカ親がすることだよ。反省すべきだ、僕自身。』
娘のサフロンは、そんな父親の心配が全く分からず、自覚もないようだ。
だが、今回のインタビューが公になった事で、残る息子たちには、反面教育になるのではないだろうか。