英グレート・オーモンド病院(略:GOSH)は木曜日、ゲノム編集での白血病治療に成功したと発表した。
化学療法や骨髄移植を超えた治療を受けたのは、レイラ・リチャードちゃん(1歳)。
©MURRAY SANDERS
レイラちゃんは、生後3か月で急性リンパ球芽白血病に。
小児白血病の75%がこの病気で、生存率は僅か25%。
造血幹細胞の中で血球がリンパ球に変わる際、異変が起き、骨髄で増殖し続け、細胞の成長が止まり、血液を造れなくなるという血液のガンである。
レイラちゃんは、化学療法を受けた後、両親から骨髄移植を受けたものの、病は進行。
GOSHは、同種移植では効果がなかったと判断し、骨髄バンクから白血球の数(HLA)の型が合うドナーを探し二度目の移植に臨んだが、病状の進行が収まったのは2か月のみ。2か月後には再発した。
GOSH骨髄移植チーム主任のPaulVery氏は
『ここまで来ると絶望的だ、すべきことはやった。』とレイラちゃんの両親に語ったが、レイラちゃんの両親は諦めなかった。
©GOSH
『娘の命の炎はまだ消えていないのよ』母親のリサは、医師に懇願。
新たな治療法の模索がはじまった。
GOSHは、遺伝子治療を行っているユニバーシティ・カレッジ・ロンドン(UCL)のWasem Qasimの研究所に赴き、治療法を訪ねる事にした。
一連の治療の結果を聞いたQasimは、移植の際に、患者側の細胞に適合し免疫力を付けなければいけないはずの移植側の細胞が何等かの原因で患者の細胞を攻撃しているのでは、と、指摘。
まさに目からウロコのひらめきを聞いたGOSHチームは、攻撃の要因となるT細胞の遺伝子要素を変えれば、どんな患者でも骨髄移植は可能になるのではないかという治療法にたどり着く。
しかし、QasimのチームもGOSHからの連絡を受けた時点で、白血病で試した実例、しかも赤ちゃんは全くない。成功すれば世界初だった。
『私たちはとても不安でしたが、レイラはとても苦しんでいました。なにがしてあげられるとすれば、必要な事をすべきだったのです。』
レイラちゃんの父アリュリーさんは語る。
そして行われた手術ではT細胞を移植者の体に馴染むようにゲノム編集した『UCART19』が移植された。
ゲノム編集移植が行われたのは2回目。世界初はHIV患者、今回が二回目だった。
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術後1か月目で『UCART19』はガン細胞を除去出来たと発表された。
この写真のレイラちゃんは、2回目の移植を終え、白血病の再発もなく、予後をみている状態である。
小児白血病は、術後最低でも2年は診なければいけない。今回のレイラちゃんの予後の経過をうけ、GOSHは15歳で同じ病に苦しむ少女をゲノム移植で治す事に挑んだ。
『この様な治療法が確立されればノーベル賞が取れるかもしれない』GOSHは医学界にささやかな希望を抱いている。
Gene editing saves girl dying from leukaemia in world first