ピザ宅配のエクアドル人・米国人女性と結婚していたのに、強制退去の危機、その理由とは…


NYブルックリンに住むエクアドル人のパブロ・ビジャビセンシオさんは、5年前に薬局勤務のサマンサさんと結婚。二人の娘に恵まれ幸せに暮らしていた。彼の運命が一変する出来事が起きたのは先週の水曜。


©GofundMe

6月1日、パブロさんはNYのフォート・ハミルトン基地にピザを届けに行った。いつもの様にNY市が発行した身分証明書を見せてそれで済むはずだった。馴染みの憲兵と挨拶しピザを届け、それでピザ屋に戻るつもりだった。だがその日は違った。

『その日は、いつもと違うアフリカ系の憲兵が門の前に立っていたんだ。そして『おい!それじゃなくて国が発行したIDじゃないと基地には入れないぞ、IDを見せろよ!』と憲兵が突っかかってきたんだ。』パブロさんは事件当時の事をこう語る。

パブロさんはビザウェーバーで入国した、いわゆる不法滞在だった。ビザウェーバーは原則90日が滞在期限なので、三か月を過ぎると不法滞在となってしまう。パブロさんはNY市が発行する身分証明書しか持っていない。

憲兵の言い分ではこうだ。パブロさんは、国防総省が発行する身分証明書を持っていなかったので、ビジター用の入館証を取得するよう即された。その時の身元確認で、パブロさんは強制送還命令が5年前に出ている事が発覚したのだ。パブロさんにとって寝耳に水だった。

憲兵は、合法的滞在証明書を持たない彼をNY市警に通報。NY市警は、パブロさんを移民管理局(ICE)に突き出し、パブロさんは身柄を拘束されてしまったのだ。

NYに限らず米国は、合法の就労ビザを持つ人間だけでは経済を支えていけない。にも関わらずトランプ政権は、国民の職を奪うという偏見の元に不法移民の追い出しに躍起になっている。

ICEが設立されたのは、9.11後の2003年。国家安全保障省の傘下の捜査機関として設立された。
トランプ政権になるまでは、パブロさんの様に、本国で就労や合法滞在の書類が揃わない為に、ビザウェーバーで渡米せざるを得ない違法入国者が居たとしても、犯罪歴さえなければ入国や滞在延長を大目に見ていた。

だがトランプ政権になってからは『ナチスのユダヤ人狩り』の様な状態が続いているのがICEである。軍や官公庁などに不法滞在者が出入りしようものなら、合法滞在者の証であるIDを見せろと要求し、なければ有無をいわさず拘留しているのだ。

パブロさんは、ビザウェーバーの間に、サンドラさんと出逢い、結婚届を役所に出した。
本来であれば米国人と結婚すれば外国人は永住権(グリーンカード)が得られるはずだが、米国では、犯罪者の永住権獲得目的の結婚、離婚が相次いでいる為、書類審査に慎重になっているのが裏目に出た。特にパブロさんの様に、入国時に正式な書類がなかった場合なおさらだ。


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移民問題を専門に扱う女性弁護士ジェニファー・ウィリアムズは、ICEの前で有志たちとデモを行った。

『サンドラさんの身になってください皆さん。愛する自分の夫が真面目に働いているにも関わらず、書類一枚揃っていなかっただけで米国から不当に祖国に強制送還される姿を。米国は自由の国と言いながらいつからこんな不寛容な国になったのでしょうか。

トランプが偏見で決めた法律が、私たちの生活を蝕み、幸せを脅かしているのです。サンドラさんは一人では娘さん2人を育てていけないのです、協力してください。』

彼女がデモを行ったその後ろには『パブロを自由にしろ!』というプラカードをかざした人々がICEの本部の前に群がっていた。

パブロさんの働いていたピザ屋『Nonna’s Deli』クウィーンズ店のマネージャーは『彼は真摯で勤勉でいい人。たかだがIDがなかっただけで強制送還?ありえないわ!』と断言している。

NY知事でクウィーンズ出身のアンドリュー・クオモは、一連の事件に対し『NY市民を差別する事は許される事ではない。彼がビザウェーバーで入国したのであれば、本来であれば彼が三か月以内に合法滞在できるように国が働きかけるべきだった。

彼が不法滞在や強制送還になるまで放置していたのは国の責任であり怠慢だ。そうして米国は労働力を失っていく。彼にはすでに家族が居る。法的保護を与えるべきだ。』と言及した。

NY市議委員のカルロス・メンチェカはICE本部前で、デモを行った『ブルックリンは人種のるつぼと呼ばれている街だ。他人を締め出す街じゃないだろう。ICEの鶴の一声で、強制送還されるなんてまっぴらだ。』


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その一方で、移民問題に詳しい法律家のケリー・フレッツはDailyMailのインタビューに対してこう語っている。
『2010年にパブロが強制送還命令が出ていたにも関わらず全く気付かなかったというのが重大な落ち度だ。この時点でICEに目をつけられていたと言っても過言ではないだろう。

一連の事件を良い方向に覆すには、かなりの努力が強いられる。家族をどれだけ大切にしていたか。2人の収入で暮らしていくのがギリギリである事などをICEに訴えるべきだ。』

さらにパブロが永住権を得る為には、合法滞在の許可も得なければいけない。
その為の書類を申請する為に、強制送還を免れたとしてもパブロは戸籍などの書類を貰う為に、故郷エクアドルに戻る必要があるのだ。


©Paul Mantinka/Splashnews.com

ICE広報は、パブロさんが永住権を申請していることは、強制送還の妨げにはならないと説明している。
だがパブロさんはビザの有効期限が切れた後も滞在を続けていたことから、2010年に強制送還を命じられた事が問題であると指摘しているのだ。

日本では『本人のうっかり』や『まさかの』では、最悪の場合は免許失効するか会社でクビになるかぐらいである。その国に住めなくなるという危険性はない。だが米国では『住めなくなる』という危険性があるのだ。いかに日本人がぬるま湯につかっているか判るだろう。


©Facebook

クラウドファンディングのGoFundMeでは、パブロさんの強制送還を防ぐべく法的手段に訴える為の資金を援助すべくファンドを立ち上げている。

Pizza deliveryman wins temporary stay of deportation after being arrested by ICE while dropping off pizza to Brooklyn army

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