ミトコンドリアDNA枯渇症のチャーリー・ガード君、力尽きる…


[AD] 「受験生に役立つ情報誌」や「大学パンフ」の請求で必ず【1000円】もらえます。

チャーリー・ガード君は、8月4日の誕生日を待たずして、7月28日、現地時間の午後3時12分、この世を去った。

©Featureworld

『私たちの美しい、小さな男の子は逝ってしまいました。チャーリーをとても誇りに思います
自力で呼吸する事も出来ず、目が見えていたかどうかも判らない。生後わずか三か月でミトコンドリア枯渇DNA症候群(MDS)という難病となったチャーリー君の病状を巡る戦いは、世論を動かした。

内臓や筋肉にエネルギーを供給するミトコンドリアが体内で造れないという世界で16人しかいない病。
唯一の治療法は、内臓や筋肉を作る細胞を外から補うという画期的治療を米国で行うというものだった。
だが、当初から治療方法に難色を示していたのがチャーリー君の生まれたグレート・オーモンド病院(GOSH)。

抜本的治療法が見つからない事と、チャーリー君に肉体的精神的苦痛を伴い、なおかつ画期的治療が見つかったとしても重篤の障害が残るとして、病院側は延命治療を断念。
両親は真向から戦う姿勢を見せ、これが英国だけでなく世界に波紋を広げる事となった。

世論の広がりは一気に拡散し、トランプ大統領が米国の治療についてツイートし、ローマ法王は管轄下の小児病院に一時的に、チャーリー君を引き取る方針を明確にした。
これほど小さな命が世界を動かした例はないだろう。

チャーリー君の両親が唯一希望を見出した治療法は、米コロンビア大の平野道雄医師が提唱した、ヌクレオシド・バイパス療法。

©Dailymail.co.uk

しかしこれは人間で治験段階に至ったものはなく、実験的治療でもチャーリー君程、重篤なMDS患者を対象にした治療でなかった事が後から判明。
英高等法院で開かれた裁判では、MRI画像を見た平野医師が、チャーリー君の全身の筋肉量がかなり消耗している事と、脳に回復不能の損傷がある事から、バイパス療法をしても治療する事は不可能と判断。

GOSHの独断だけでなく、世界的権威をもつ医師からも治療の見込みがないと断言された事や、緊急の暫定処置申し立てをしていた、欧州人権裁判所からも却下。

チャーリー君の両親は、7月24日に、上告を諦めざるを得なくなった。
以前こちらでは、チャーリー君と違ったタイプのMDSと戦う6歳の男の子Art Jr君の闘病記についても紹介した。
ただArt君の場合は、チャーリー君ほど、重篤ではなかったという事になる。

チャーリー君の治療の為に、母親のコニーさんと、父親で郵便局員のクリスさんの元に集まった、渡航費と治療代合わせて2億に近い寄付金は、チャーリー君の治療に使われる事はなく、難病の子供の為に使われる事となった。

『私たちにとって裁判中はGOSHのスタッフは恐怖の対象でしかなかった。チャーリーの親である権利をいともたやすく奪ってしまう恐ろしい所でしかなかっわ。』
コニーさんがメディアにこう呟いたのが災いしたのか、GOSHのスタッフは悪魔呼ばわりされ、医師や看護婦に対する殺害予告や脅迫状が数千通ですまなかったという。

それだけではなく、全く関係ない入院している子供患者の見舞客にまで被害が及んだというのだ。

チャーリー君の問題が、自分の手の届かない所までいってはいけないと判断したコニーさんは、死の淵に居るチャーリー君をホスピスに移すか、自宅に引き取るか、GOSHと争っている最中に、メディアに向けてこういった。
『病院職員や息子と関係している人に対する嫌がらせや脅迫は許せません。人々は立ち位置が違うからこそ対立する時があります。』

©Featureworld

コニーさんは、GOSHからの治療の見込みがないと判った7月末、チャーリー君を自宅に引き取ろうとしたが、安楽死させるべく、最後まで病院側と争う事になり、チャーリー君はその最期を小屋の様まホスピスでコニーさん、クリスさんと共に迎える事になった。

『彼の遺産は、決して死ぬことはありません。チャーリーは、多くの人が人生の中でやるよりも、11カ月でこの世でより多くの人々に大きな影響を与えてきたのです。』とコニーさんはコメントしている。

©Featureworld

人の命がある限り生きる権利はあるというべきなのか、安楽死させるべきなのか。
そこに関係者だけでなく、様々な立ち位置の人々が絡み、何としてでも子供の命を繋ぎたいという両親の気持ちがメディアに支持された為に、子供を持つ親を必要以上にナーバスにしてしまったのではないかと思う。

チャーリー君の様に生まれた頃から難病を抱え、命のリミットを知らされた母親は子供の命がある限り病院や医師に命を奪う権利はないと思うだろう。

©Featureworld
その反対に、老いを迎えた人の中には死にたくても死にきれないという人も居る。
両者の溝は埋まるものでなく、チャーリー君が僅か11か月の命で私たちに教えてくれたのは、命ある限りどう生きるか、どう周囲の人々の人生に影響を与え、何かを気付かせてくれるかという事だろう。

Our last hours with our son: Charlie Gard’s parents emotionally reveal how they finally brought their baby home after he died in a hospice and spent several days saying their last goodbye

こんな記事も読まれています


Tree of bean